企業がマーケティングを行ううえで、オファーは欠かせない要素です。
例えば紙のDMが家に届いたとき、パッと見て、すぐにごみ箱に捨ててしまうのか、それとも開封して中身を確認するのか、両者の違いを産み出す大きな要素の一つがオファーです。日々大量に届くEメールであっても、開封して中身を読んでもらえるかどうかを左右する要素にオファーがあります。
今回のコラムでは、マーケティングキャンペーンの成果を左右する「オファー」について、ダイレクトメール(DM)での活用事例を交えながら、その必要性や要素、種類を詳しく解説します。
オファーとは、一般的に「提案」や「訴求」という意味を持つ言葉ですが、マーケティングの文脈では、顧客に商品やサービスを購入する際の付加価値や特典を示すものとして用いられます。このオファーは、顧客の購買意欲を刺激し、最終的な購入行動へと導く重要な要素となります。
具体的なオファーの例としては、オンラインショッピングでの「送料無料」や「初回限定10%オフ」、サービスの「30日間の無料トライアル」や「返金保証」などが挙げられます。特にダイレクトメール(DM)を利用したマーケティングでは、限定クーポンの提供や、受信者のみが参加できる特別なイベントの案内など、具体的で魅力的なオファーを明記することで、受信者の関心を引き付け、アクションを促す効果が期待できます。
なお、ダイレクトメール(DM)におけるオファーの役割については、下記の記事で詳しく解説しています。ご興味のある方はあわせてご覧ください。
オファーは、顧客の心理を理解し、そのニーズや欲求に応える形で提供されるべきです。
適切なオファーを提示することで、マーケティング活動の成果を大きく向上させることができます。
顧客が購入に悩んでいる際に、魅力的な取引条件(オファー)を提示することは、マーケティングキャンペーンの効果を高める大きな要素のひとつです。特に、購入を迷っている顧客に対して、魅力的な取引条件や特典を提示することで、その決断を後押しする役割を果たします。
具体的な例として、「2つ購入で1つ無料」や「期間限定での送料無料」などのオファーは、顧客に購入の動機を提供し、購入の障壁を低くする効果があります。
実際、オファーの有無によって、顧客の反応や購入率に20%~30%の差が生じることが知られています。これは、オファーがマーケティングキャンペーンの成功において、中心的な役割を果たしていることを示しています。
効果的なオファーを設計するためには、単に商品の魅力や価格だけに焦点を当てるのではなく、顧客の関心やニーズに応じたオファーを提供することが重要です。顧客の心理や動機を理解し、それに合わせたオファーを考えることで、より高い反応率や購入率を実現することができるでしょう。
例えば、アメックスのクレジットカードの中には、年会費が30,000円以上と一般のカードと比較して割と高額なものがありますが、更新すると系列ホテルのアップグレードができるなどの特別なオファーが付加されるので、「更新料高いな」と思いつつも、「特典だけで元が取れる」と結局更新する方が多くいらっしゃいます。
一方で、クレジットカードにそこまでのお金をかけるなんてもったいないと、「期間限定!入会費年会費無料」のカードしか基本的には使わないという方もいます。
このように、人それぞれの価値観で、「刺さる」ポイントは異なるので、それぞれのターゲットに応じたオファーが必要です。
次に、オファーの構成要素を考えていきましょう。
オファーには、下記の5つの構成要素があります。
商品が悪ければ、どんなに素晴らしいオファーでもお客様を振り向かせることはできません。
まずは「商品またはサービス」を紐解いてみましょう。
良い商品、サービスには、次の4つの要素が備わっています。
オファーにおいて重要なのは、1.特徴よりも2.ベネフィットです。
例えば、化粧品で「純粋レチノール配合のアイクリーム」と商品の特徴を説明することも大事ですが、それよりも「このアイクリームを使うと目元のシワが目立たなくなり、年齢より若く見え、毎日良い気分で過ごせる」「ひょっとしたら、若くて素敵な彼氏ができるかも?!」という、その商品を使用することによって、どういうベネフィットが得られるかを具体的にイメージさせられるか、のほうが大切です。
さらに、このアイクリームが「今だけ!通常価格15000円のところ、12/25までに購入いただくと、9800円!」などの期間限定価格のオファーが組み合わされていたらどうでしょう?
クリスマスまでに、キレイに変身できる自分をイメージして、購入のアクションにつながりそうですね。
このように、オファーの組み合わせやそのオファーが適したタイミングであるかどうかも重要です。
例えば、下記のダイレクトメール(DM)事例では、これまで購買間隔に関わらず3か月に1回投函していたDMの送付タイミングとクリエイティブの改善を行うことで、F2転換率の向上とクロスセルを実現しました。
価格もオファーのひとつとして考えられます。
ここでいう価格とは、税金、配送料、取扱手数料など、顧客が支払うすべてのコストを指します。価格設定の戦略は大きく以下の2種類です。
価格設定は上記の戦略の傾向をふまえ、売上の最大化と収益の最大化のバランスを見ながらバランスをとる必要があります。また、顧客にとって納得感のある価格設定にすることが大切です。
支払い条件とは、商品を購入する際にどのような手段で料金を支払えるかを提示するものです。具体的には、現金、クレジットカード、口座振替などがあります。
支払い条件もオファーの要素となり、顧客がスムーズに支払いができるようにすることが大切です。基本的には複数の支払い条件を提示し、顧客がその中から自分に合った支払い方法を選択できるようにしておくことで、レスポンスが高くなる傾向にあります。
近年では、特に若年層を中心にGoogle ウォレットやApple Payなどの、スマートフォンやタブレットを利用した決済方法が増加しているため、商品のターゲット層によりどのような支払い条件が適切かしっかりと検討しましょう。
さらに、支払いを延期する方法を提供することも効果的なオファーです。
例えば、分割払いは高額商品の購入で特に有効なオファーとなり、請求書支払いは購入時に支払い方法を選択したり、登録したりする手間による離脱防止に有効です。
また、無料お試し期間を設けることも支払いを延期するオファーとして代表的なものです。無料お試しでは一定期間サービスや商品を無料で利用できるものの、お試しをするためには有効なクレジットカード番号を登録する必要がある場合がほとんどで、無料期間が終了した後は自動で決済が発生する仕組みです。
インセンティブは購入へ導くための直接的な動機づけとなるオファーです。
インセンティブにはさまざまな種類があり、プレゼントの付与や、割引、クーポン券、懸賞への応募権利などがあります。
インセンティブは商品を購入する強い後押しになりますが、商品やサービスではなく、インセンティブそのものを目的に購入する顧客が増えてしまわないよう注意しましょう。検討しているインセンティブが最適かを見極めるためには、市場でのテストを実施することが必要不可欠です。
保証とは、商品の購入後に顧客が抱く可能性のある「不安要素」を取り除く条件を提示するオファーです。具体的には、返金保証や返品保証などがそれに当たります。
またBtoBでは、サービスの利用中に営業担当が別の商品をセールスしないことを約束することで、レスポンスが向上する場合があります。
オファーは単純に価格を下げればよいというものではありません。効果的にオファーを活用するためには、商品の特性やターゲットに合わせて最適なオファーが何かを検討することが求められます。
ここでは、代表的なオファーの種類について紹介します。
商品そのものだけではなく、付加価値を設けることで満足度を高めるオファーには以下のようなものがあります。
商品におまけをつけることは、商品を購入しただけではないお得感を提供できます。また、商品にランクをつけることで、高いランクを購入した顧客は「良いものを選択した」という満足感を得られ、低いランクを購入した顧客は「お得なものを選択した」という満足感を得られるでしょう。
安心感を与えるオファーは、顧客の不安を取り除くもの全般を指します。先述した「保証」はこれに当たりますが、他にも分割払いなども安心感を与えるオファーに含まれます。
具体例を見ていきましょう。
返金・返品保証やお試し無料サンプルは、化粧品などに見られるオファーで「購入する商品が合わなかったらどうしよう」といった不安を解消できます。
カスタマーサポート対応は、取り扱いが難しい商品や電化製品などを購入する際によく見られるオファーです。これは、購入したあとに「利用方法がわからなかったらどうしよう」といった不安を解消できるでしょう。
希少性とは、「今だけ」や「あなただけ」といった制限を設けることで、「今買ってしまおう」という心理を働かせるものです。具体例としては以下の通りです。
上記で紹介したとおり、オファーにはさまざまな種類があり、値引きはその数ある種類の中のひとつにすぎません。
「値引きをすれば購入してくれるだろう」と短絡的に金額を下げるのではなく、どのようなオファーを提示すれば顧客により満足してもらえるかを考えることが大切です。
さらに、オファーはあくまでも購入の最後の後押しだということも忘れてはいけません。商品そのものに魅力を感じてもらうことを前提にマーケティング戦略を考え、オファーはあくまで戦略の一部であることを心に留めましょう。
フュージョン株式会社では、米国の著名なダイレクトマーケターであるJim Kobs氏が提唱する99通りのオファーをチェックシート形式でまとめて公開しています。オファーについて理解を深めたい方は、ご利用ください。
【お役立ち資料】Jim Kobs氏による99通りのオファーチェックシートはこちら
オファーは、単に商品やサービスの魅力を伝えるだけではなく、顧客の心をつかむための重要な要素です。しかし、そのオファーが真に効果的であるためには、顧客のニーズや関心、動機を深く理解することが不可欠です。
現代のわたしたちは情報過多の時代に生きており、多くのオファーに日々さらされています。その中で、受け取る人の心を動かすオファーとは、単に魅力的な条件を提示するだけでなく、彼らの日常や悩み、欲求に寄り添ったものでなければなりません。ターゲットとなる顧客層のライフスタイルや価値観を理解し、それに基づいたオファーを設計することで、より高い反応率や購入意欲を引き出すことができます。
効果的なオファーは一度考えたら終わりではありません。常に市場の動向や顧客の反応をモニタリングし、オファーを見直し、最適化していく姿勢が求められます。顧客理解を深め、その理解に基づいたオファーを提供し、効果測定を行うことで、マーケティングキャンペーンのレスポンス向上を実現していきましょう。
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