ポイントプログラムとは、新しい顧客を獲得する、もしくは既存顧客のLTV(Life Time Value)を最大化するために購入履歴や顧客行動などのデータにもとづき、購入の対価として特典や割引サービスなどの付加価値を提供する仕組みのことです。例えば、商品の購入やサービスの利用、ブランドに対する行動などを通じて一定のポイントを獲得し、それを企業が提供する特典や購入時の割引と交換できる仕組みが一般的です。
近年では多くの小売業や飲食業が自社でポイントプログラムを運用している一方で、楽天やVポイントなどのポイントサービスを運用している企業と提携し自社以外のポイントを提供している企業も増えています。
しかし、実際にはポイントプログラムを運用しながら、単に割引サービスを提供しているだけの企業が多いのも事実です。
そこで今回のコラムでは、顧客にとって効果的なポイントプログラムの設計・運用を行うために必要な提供オファーや実際の活用事例、ポイントプログラム設計時の注意点について解説します。
| 【目次】 ・ポイントプログラムとは? ・ポイントプログラムの基本である金銭的オファー ・顧客目線で考える利便的オファー ・顧客ロイヤルティをより高める心理的オファー ・【事例紹介】食品通販業でのポイントプログラム導入 ・ポイントプログラムの効果的な運用方法・注意点 ・規約や会計基準に関する注意点 ・自社に合ったポイントプログラムの導入ご相談はフュージョンへ |
ポイントプログラムとは、顧客の購買行動やサービスの利用に対して企業独自のプログラムもしくは外部の企業が運用しているプログラムを通じて、企業通貨として使用できる「ポイント」を付与し、そのポイントを自社や提携している企業の商品やサービスの割引、もしくは無料で利用できるなど、独自の特典と交換できる仕組みのことです。例えば、小売業や飲食業、ECサイトなど、消費者を顧客に持ち再購入や再来店を促したい多くの企業が、自社に対してのロイヤルティを高めるための戦略のひとつとして取り組んでいます。
つまり、ポイントプログラムは、単なる「ポイント=利益を還元するための仕組み」ではなく、自社に対する顧客の満足度や自社への愛着を高める重要なロイヤルティ向上のための戦略であり、ロイヤルティプログラムに取り組む企業にとっては欠かせない施策だと言えます。
では、効果的なポイントプログラムを設計するためには、何が必要となるでしょうか。
ポイントプログラムはロイヤルティプログラムの一部と捉えることができます。したがって、その設計のベースとなるのは、顧客が企業に対して抱く顧客ロイヤルティをいかに高めるかという視点です。顧客ロイヤルティは、経済ロイヤルティ、行動ロイヤルティ、心理ロイヤルティの3つの要素から成り立っています。必要となるのは、この3つの要素をどのように組み合わせ、提供するかです。そしてこれらの要素を育成するために、「金銭的オファー」「利便的オファー」「心理的オファー」の3つの提供価値を組み合わせ、さらにバランスよく提供することが重要です。
そこで、施策の基本となるその3つの提供オファーについて解説します。
ポイントプログラムで顧客に提供するオファーを考える上で、一番重要なのは金銭的オファーです。そして、その一番の要が、顧客への還元率です。還元率は顧客が支払った金額に対して付与されるポイントの割合である付与率と、顧客がポイントを利用する際の償還率から成り立っています。
例えば、付与率が1%で、償還率が100%の場合、100円の購入で1ポイントが付与され、1ポイントは1円として利用できます。
通常、ポイントプログラムでは全ての顧客に同一の付与率と償還率を適用しています。
ただし、特定の顧客や商品に対しては、付与率を変動させることで顧客を優遇し、購入を促すことができます。また、特定の日や商品で付与率を上げることで、顧客の購入パターンを形成することも可能です。このように金銭的オファーを適切に管理することで、ポイントプログラムでの経済ロイヤルティを確固たるものにできます。一方で、償還率に関しては、コントロールせずに一定の割合で固定することがお勧めです。ただし、ポイント交換のラインナップに自社商品や自社開発の特典がある場合は、現金や金券の償還率より高い率を付与することで、自社にとって有利な交換先に誘導することも可能です。現在のポイントプログラムに適応されている会計制度を考えれば、交換先への誘導も重要になっています。
ポイントプログラムにおいて、利便的オファーは顧客の行動ロイヤルティに直結しています。この価値は、「どこでもポイントを貯められる」「どこでもポイントを使える」という二つの要素に集約されます。
例えば、楽天やVポイントなどの共通ポイントプログラムは、この利便的オファーを最大限に引き出すため、多くの企業、特に流通・小売業を加盟店とし、顧客が日常生活の生活圏内、行動圏内でポイントを貯め、使えるようにしています。
しかし、自社でポイントプログラムを運用する場合、利便的オファーの提供には限界があります。そのため、顧客とってどのような利便性を提供するかが重要な課題です。
この課題を解決するためには、様々な利便的価値を提供することが効果的です。例えば、紙のスタンプカードとスマホアプリの併用や、ある一定のポイントがたまった場合、ポイントの有効期限が来る前に事前に教えてくれるなどの施策は、顧客の行動につながりやすいため、利便性の向上につながり有効です。
下記の例は、スーパーマーケットいなげや様のポイントプログラムにおいて、有効期限をダイレクトメール経由でお知らせし、ポイント失効前の来店を促したものです。
ポイントが失効する1ヵ月前に、現在のポイント数と間もなく失効する旨をDMでお伝えし、送付後にコールセンターよりお電話でもお知らせをすることで来店を促しました。その結果、DM送付者の25.6%がポイント失効前に再来店し、結果的に休眠顧客の復活にも貢献しました。詳しくは事例ページをご覧ください。
利便的オファーの提供において最も重要なことは、顧客目線でのサービス設計です。顧客の行動の外側にある利便性は、不要なオファーとなります。提供にコストがかかるだけでなく、サービスの無駄になってしまい、行動を阻害する要因にもなります。重要なことは、顧客のニーズに応える利便的オファーを提供することです。これは顧客の行動を誘発するうえでも重要であり、ポイントプログラムの設計に欠かせない要素といえます。
心理的オファーは顧客がブランドやサービスに対して感じる個人的な感情です。これには、「このお店の店員さんが好きだから」「このブランドの商品を持っているとリッチな気分になれるから」「このブランドが好きだから」「このサービスを使うと安心するから」など、さまざまな要素が含まれます。
顧客に心理的オファーを提供することで、ブランドへの愛着や特別感を生み出し、その先では心理ロイヤルティを高める重要な役割を果たします。
特に心理的オファーが高まると、顧客がそのブランドやサービスとの関係を「自分ゴト」として感じられるようになり、例えばポイントの交換対象の割引や特典だけでなく、自社で開発した独自商品や、顧客が本当に必要としている商品を求めるようになり、その結果以下のような「私」と「ブランド」の間に絆が生まれます。
こうした「私」という感覚を強調することで、ブランドやサービスが単なる取引の対象を超え、顧客にとって「特別な存在」となります。この特別感が、顧客とブランドの関係を深め、長期的な顧客ロイヤルティを築く基盤となります。実際、当社と株式会社ネオマーケティングとの共同調査結果を見ても、消費者は金銭的オファーだけでなく利便的・心理的オファーについてもポイントプログラムに参加する理由として挙げていることがわかっています。詳しくは調査結果レポートをご参考ください。
鎌田醤油株式会社は、1789年に香川県で創業した醤油・調味料の製造販売を行う会社です。
“古いけれども 新しい”の精神で、伝統を受け継ぎつつもより便利で手軽に扱える商品の開発に取り組んでいます。
鎌田醤油では、かねてからお客様からの要望が多かったポイントサービスの導入を決定し、フュージョンでは導入までのプロジェクト推進に関するご支援を行いました。
「ステージ制 ポイントサービス」の導入後、鎌田醤油のお客様からは「ポイント制度が始まったんですね。貯まるのを楽しみにします。」「これでまた購買意欲が上がります。」といったポジティブな声が多数寄せられています。事例の詳細は下記のページをご一読ください。
企業独自のポイントプログラムは、その企業ならではのルールや特典を設計できるため、ブランドの個性を顧客に伝えることが可能です。顧客としても、ポイントを貯めているので、その企業や商品やブランドを選ぶ回数が自然と増えていき、その分顧客との接点が増え、ブランドロイヤルティが深まる効果があります。
この事例は、お客様の声を取り入れた企業独自のポイントサービス設計が、顧客満足度と顧客ロイヤルティの向上に寄与することを示しています。
ポイントプログラムを成功させるためには、ただポイントを付与するだけではなく、顧客の特性やニーズに合わせた運用設計が重要です。以下では、効果的な運用方法と注意点について解説します。
ポイントプログラムの設計では、前半でご紹介した「金銭的オファー」「利便的オファー」「心理的オファー」の3つをバランスよく組み合わせることが大切です。これらを顧客のライフサイクルやセグメントに応じて適切に使い分けることで、より効果的な運用が可能となります。
(組み合わせの例)
この例では、新規顧客に対しては、初めての利用時に目に見える金銭的オファーを提示することで顧客の購買意欲を促進し、ロイヤル顧客向けには、特別感を提供しブランドへの愛着をさらに深められるようにしています。休眠顧客については、ポイントの失効リマインドのような行動オファーを通じて再来店を促し、顧客関係を再構築しています。
ポイントプログラムでは、顧客のセグメントや目的に合わせた適切な戦略設計が重要になります。
ポイントプログラムの運用には、規約を用意したり、法令を遵守したりすることが不可欠です。
例えば、以下の点に注意することが大切です。
ポイントプログラム規約が不十分だと、顧客とのトラブルや不正利用のリスクが高まります。規約には最低限以下を含めることが通常です。
詳細な規約作成方法については、こちらの記事をご参照ください。
会計基準の2021年の変更がポイントプログラムの運用に大きな影響を与えたことはまだ記憶に新しいのではないかと思います。会計基準だけではなく、関連する法令の変更に迅速に対応するため、定期的に情報を収集し、必要に応じて専門家の意見を仰ぐことが重要です。
ポイントプログラムは、顧客とのつながりを深め、長期的な関係を築くための重要なロイヤルティ戦略であり大事な施策です。しかし、金銭的オファーの提供だけに依存した施策では、競合企業や外的環境の変化により顧客との関係性が揺らぎやすくなるのも事実です。
ポイントプログラムをより効果的にするためには、金銭的オファーを基盤に、利便的オファーや心理的オファーの提供も必要です。その上で企業独自のポイントプログラムとしては、他社と差別化する工夫が求められます。これにより、顧客にとって「特別な存在」となるブランド体験を提供し、顧客ロイヤルティを高めることができます。
フュージョン株式会社では、30年以上にわたり、CRM領域のマーケティング支援会社として、多くのクライアント企業をご支援してきました。ポイントプログラム設計はもちろん、ロイヤルティ戦略やCRM戦略の設計から施策設計、実行と運用でのお悩みがある方は、お気軽にご相談ください。
また、そもそもCRMとは何か、何をすればよいのか、というお悩みをお持ちの方に向け、CRMの基礎から解説した資料もありますので、ぜひお役立てください。