ポイントプログラムとは、新しい顧客を誘引したり、既存顧客のLTVを大きくしたりするために、購入履歴などにもとづき、割引サービスなどの付加価値を提供する仕組みです。楽天やauなどをはじめ、さまざまな企業がポイントプログラムを提供しています。
お客さまの心をつかむようなポイントプログラムを設計し、運営していく上でのヒントは、ロイヤルティプログラムの設計のベースになる「金銭的価値」「利便的価値」「心理的価値」の3つの価値から得られます。
https://www.fusion.co.jp/column/2021/12/3values-loyalcustomer/
今回のコラムでは、効果的なポイントプログラムの設計・運営を行うために必要な提供価値について、ロイヤルティプログラムの提供価値にあてはめながら、どのように設計すべきかを解説します。
一番重要なのは金銭的価値
ポイントプログラムを3つの提供価値で考える上で、設計上一番重要なのは金銭的価値です。
そして、その一番の要がインセンティブ(ポイント)の付与率と償還率です。
付与率は、文字通りお客さまが支払ってくれた金額に対してのインセンティブ(ポイント)を付与する率です。償還率は、付与したインセンティブ(ポイント)をお客さまが使用する時の交換価値を指します。
例えば、購入金額に対して付与率1%、償還率100%で支払いに充当できるポイントプログラムであれば、
100円の購入金額で付与されるポイント=1ポイント
支払い時にポイントを充当する場合1ポイント=1円
として使用することができるプログラムと言えます。
ポイントプログラムとしての設計では、全てのお客さまに同一の付与率と償還率を与えることが多いですが、特定のお客さまや商品をもっと購入して欲しいと考えた場合には、お客さまの利用頻度や金額に合わせて付与率を変えることで、お客さまを優遇することが可能です。
また、購入パターンを習慣づけたい場合、特定曜日や特定日、特定商品で付与率を上げることによって、お客さまの商品購入の習慣づけにすることも可能です。
このように、金銭的価値をうまくコントロールすることで、ポイントプログラムがよりお客さまを囲い込むための施策になります。
一方で、償還率に関しては、コントロールせずに一定の割合で固定することをお勧めします。ただし、ポイント交換のラインナップに自社商品や自社開発の景品がある場合は、現金や金券の償還率より高い率を付与することで、自社にとって有利な交換先に誘導することも可能ですので、交換先の決定も重要なポイントです。
なお、2021年4月から新会計基準が適用されたことに伴って、ポイントプログラムにおける収益認識時の会計基準が変わりました。償還率との兼ね合いで押さえておきたい内容含め、影響の詳細を下記のコラムで解説しています。
https://www.fusion.co.jp/column/2022/02/pointprogram-newaccountingstandards/
利便的価値はお客さま目線で
次に、利便的価値の側面を整理してみます。
ポイントプログラムにおける利便的価値とは、「どこでも貯めることができる」「どこでも使うことができる」の二点に尽きます。
例えば、楽天やTポイントなど、ポイントサービスを提供する事業者の共通ポイントプログラムは、この利便的価値を重視しており、さまざまな企業、特に流通業を加盟店として持ち、お客さまの日常生活におけるあらゆる接点でポイントを貯め、また使用することができるようになっています。
一方、自社でポイントプログラムを運用している場合、利便的価値がある程度制限を受けることになり、どのようにして利便的価値を提供するのかは課題になりやすいです。
その課題を克服するためには、さまざまな利便的価値を提供することが効果的です。
例えば、紙のスタンプカードとスマホアプリの併用や、ある一定のポイントがたまった場合、自動的に溜まったことを教えてくれる、ポイントの有効期限が来る前に事前に教えてくれるなどの施策は、お客さまの利便性向上につながり有効です。
利便的価値で重要なのは、お客さまが必要としている利便的価値の提供ができているかどうかなので、何よりもお客さま目線で考えることが大切です。必要とされない利便的価値は、コストがかかった上に無駄なサービスになってしまいます。
心理的価値は自分ゴト化で強化できる
お客さまが感じている心理的価値には、さまざまなものがあります。
例えば、
「近くに店舗があるから」
「安く買いたいから」
「お得に買い物したいから」
「ブランドが好きだから」
などがあげられます。
そうしたお客さまに対しても、ポイントプログラムを使って今以上に心理的価値を強化できます。
例えば、交換対象が金銭だけではなく、自社で開発した景品や、販売している商品(大前提としてお客さまが必要としている景品や商品であることが重要です)をラインナップに加え、その上で通常よりも安く、もしくは早く入手できるとしましょう。
そうすると、お客さまの中で単に「安い」や「お得」というパーセプションに加え、
「私が好きな商品(景品)が」
「私が必要としている商品(景品)が」
「私がなかなか入手できない商品(景品)が」
など、「私」というパーセプションが文脈に加わります。この「私」という心理が加わることにより、ブランドが自分ゴト化されやすくなります。
そのような状況を作り出すことができればお客さまとブランドとの関係性がより強化されることでしょう。そのため、心理的価値も利便的価値同様、お客さま目線で設計することが重要です。
ポイントプログラムの強化には3つの提供価値を複合的に
ポイントプログラムは、お客さまを囲い込むための施策であることは言うまでもありません。
しかし、お客さまとのつながりが単に金銭的価値の提供だけであれば、競合企業や外的環境の変化などにより、関係性は影響を受けやすいでしょう。
お客さまとの関係性をより強力で長いものにするためには、できるだけユニークなポイントプログラムにすることが必要です。それは、ロイヤルティプログラムの前提ともなる金銭的価値をベースにした上で、利便的価値や心理的価値を他社と差別化することで実現できます。
https://www.fusion.co.jp/column/2021/11/indicator-for-loyalcustomer/
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https://www.fusion.co.jp/library/royal_customer/
▼参考事例:競合店オープンによる会員離反防止施策「競合店出店対策プロジェクト」で売上減少を最小化(株式会社いなげや様)
https://www.fusion.co.jp/case/case001