今回フュージョン株式会社は、株式会社ネオマーケティングと共同で、公式ECサイトから定期購入している20歳以上の男女500名を対象に、継続購入きっかけ・理由や顧客のロイヤルティ向上要因、定期購入時の不満点などを幅広く調査しました。
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【共同調査概要】
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本コラムでは、特に継続購入前提が強くなりやすい5カテゴリ(健康食品・サプリメント、化粧品・スキンケア・ヘアケア、食品・飲料、日用品、ペット用品)について回答結果の一部を抜粋して解説します。小売業界のマーケティング担当者やD2C事業に携わる方にとって、顧客ロイヤルティ維持・向上のヒントとなれば幸いです。
本調査の回答者は、現在公式ECで定期購入を利用している20歳以上の男女500名です。過去利用者や未経験者は含まれておらず、現役ユーザーに絞った点が特徴です。
調査前の事前スクリーニングでは、公式ECだけでなく他のECチャネル(モール型ECなど)も利用しているかを確認したところ、回答者500名のうち23.2%はモール型ECを含む他のECチャネルも利用していました。本調査ではあくまで、公式ECで継続購入しているユーザーの行動と意識を読み解くことを目的としています。
公式EC利用カテゴリは、健康食品・サプリメント(57.2%)、化粧品・スキンケア(49.4%)、食品・飲料(27.2%)、日用品(11.2%)、ペット用品(9.4%)の順で、生活に密着した補充・消費型と言えるカテゴリが大半を占めました。
公式ECを利用する理由としては「正規品の安心感」「製品情報の確実性」「品質管理への信頼」など、ブランドとの直接的な関係性を重視する声が多く、顧客ロイヤルティ形成・向上を考えるうえで示唆に富む母集団となっています。
Q1では、カテゴリごとに「その商品の定期購入を始めたきっかけ」を複数回答で聞きました。以下では、回答理由別に各カテゴリの回答結果を確認していきます。
まず、健康食品・サプリメントでは「通常購入するよりも価格が安かったから」が48.2%で最も多く挙がりました。
同じ項目は以下のカテゴリでも上位に位置し、
と、いずれもカテゴリ内で最上位または上位の理由になっています。以下は、5カテゴリ回答割合です。
健康・美容・ペットといった継続利用前提の商材では「定期のほうがお得」であることが申し込みを後押ししていることが考えられます。「まずはお得だから始めてみる」という典型的な申し込み動機が共通して見られます。
「毎回注文するのが面倒だったから」といった利便性に関する理由は、全ての商品カテゴリで25%を超える回答割合となりました。また、「買い忘れを防ぎたかったから」という理由は、日用品では26.3%と他のカテゴリよりも回答割合が多くなりました。
食品・水・コーヒー・洗剤など、なくなると困る商品では、価格メリットと同じくらい手間や不安の解消が定期購入を始めるきっかけになっていることがわかります。
「SNSやWeb広告で商品を知り、興味を持ったから」「インフルエンサーや有名人が紹介・おすすめしていたから」といった認知起点の理由は、カテゴリによってばらつきが見られます。
まず「SNSやWeb広告で商品を知り、興味を持ったから」は、
となっており、日用品やペット用品で比較的割合が高いことが分かります。
日用品やペット用品のように商品差が見えづらいカテゴリでは、SNS広告などで新しいブランドを知り、そのまま定期購入の検討につながるケースが一定数あると考えられます。
一方、「インフルエンサーや有名人が紹介・おすすめしていたから」が高かったのは、
の2カテゴリで、日用品(30.3%)では最も高い理由として挙げられました。洗剤などの日用品といった性能の差が直感的に分かりにくい商品では、専門家やインフルエンサーの「おすすめ」や「使ってみたレビュー」が購買の安心材料になりやすくなっている可能性があります。
Q2では、「その商品の定期的な購入を継続している理由」を複数回答で聞いています。5カテゴリを通して見ると、継続理由はおおまかに
の3つに集約されます。
まず、「商品の品質や効果に満足しているから」は、以下のカテゴリで軸になる継続理由と言えます。
特に健康食品・化粧品では約半数が継続理由として挙げており、定期にしてまで続ける価値があるかどうかが、継続の前提になっていることがわかります。
あわせて、以下のように「価格が手頃で続けやすいから」も、すべてのカテゴリで2〜3割台に位置しています。
Q1(始める理由)では「お得だから始めた」という傾向が強く出ていましたが、Q2では商品に満足している × 無理なく払える、の組み合わせが、継続を支える土台になっていることが見えてきます。
次に、「毎回注文する手間が省けて便利だから」「買い忘れがなくて安心だから」といった利便性の理由も見てみます。
「毎回注文する手間が省けて便利だから」の場合、食品・飲料での回答割合が35.5%と最多で、次に多かったのがペット用品でした(35.4%)。
「買い忘れがなくて安心だから」については、日用品(28.9%)、ペット用品(24.6%)が比較的高い割合で回答しています。
Q1の回答傾向と同じく、なくなると困る商材では、定期にすることで在庫管理から解放されること自体が継続理由になっていると解釈できます。
Q1では「始める理由」としても利便性が挙がっていましたが、Q2では「一度始めた後も、やめる理由がない/むしろ便利なので続ける」という構造が見えてきます。
3つ目の軸として、自分や生活とのフィット感に関する理由にも触れます。
ここで「自分に合った商品だと感じているから」を見ると、いずれも2〜3割前後の回答割合になっています。
単に「安いから」「便利だから」だけでなく、
などといった形で、生活や価値観の一部として組み込まれることで継続性が高まっていると考えられます。
Q3では、定期購入の利用を続ける中で「その商品のブランドに対する愛着や信頼(ブランドへのロイヤルティ)が高まった「きっかけ」」について尋ねました。結果として商品カテゴリごとで回答に違いが出ましたので、以下解説します。
「健康食品・サプリメント」「化粧品・スキンケア・ヘアケア」「食品・飲料」で多く挙がったきっかけは、「商品を使ったとき」でした。また、「期待していた以上の品質だったとき」が次点でした。
継続利用前提かつ身体的な影響が直接伴う商品カテゴリでは、当然ではありますが、商品の機能自体がロイヤルティ成立の必須条件であることが改めて確認できます。
日用品とペット用品では、他の商品カテゴリと比較して 「ブランドから送られてくるメルマガや会報誌の内容が有益だったとき」および「SNSなどで他の利用者の良い口コミや共感できる投稿を見たとき」がきっかけとして多く挙がりました。
日用品もペット用品も、どちらも生活に密接し、商品選びが難しいカテゴリであることから、ユーザーは安心できる根拠を重視する傾向が強く表れています。
日用品は一般的には大きな性能差が見えにくく、ペット用品はペット自身の反応を直接確認しづらいという特徴があり、いずれも自分だけでは判断しにくい商材である点が共通しています。
そのため、ブランドからの有益な情報や他者の実体験情報が、ユーザーにとって信頼を築く重要な要素となり、ロイヤルティの形成を左右していると考えられます。
Q4では、「あなたがそのブランドから「大切にされている」と感じるのは、どのような瞬間ですか」と複数回答形式で尋ねました。顧客が大切にされていると実感する場面で比較的多かったのは、特典の提供と親身な対応でした。
ここでは特徴が出ていた一部の回答結果を抜粋して簡単に解説します。
Q3「ロイヤルティが高まるきっかけ」と同じく、継続利用前提かつ身体的な影響が直接伴う商品カテゴリで挙がったのは、継続利用者向けの割引やプレゼント、誕生日・記念日の特典など、ブランドからの特別扱いを感じる瞬間でした。
「継続利用者向けの特別な割引やプレゼントがあるとき」と回答した割合は、健康食品32.5%、化粧品38.5%、食品・飲料29.4%でした。また、「誕生日や記念日にメッセージや特典が届くとき」との回答は健康食品24.1%、化粧品30.4%と比較的高い水準で挙がっており、特別扱いは「大切にされている」と感じる最も分かりやすいシグナルになっていることが分かります。
日用品とペット用品で多く挙がった回答が「問い合わせや相談に、親身になって対応してくれたとき」でした(日用品33.9%、ペット用品38.3%)。
Q3のロイヤルティ向上要因でも同様の傾向が見られたように、機能差がそこまで大きくない、あるいは使用後の感想が直接把握できない商品カテゴリについては、「困ったときに頼れる存在であること」がブランドへの信頼感を強める重要な要素だと考えられます。
本調査の結果を見ると、回答割合が高い項目ほど重要で、割合が低い項目は効果が限定的に見えるかもしれません。しかし、これらの数値はあくまで消費者が「印象に残っている」「自覚的にそう感じた」体験の頻度を示したものであり、施策そのものの価値や有効性を一義的に示すものではありません。
実際の顧客ロイヤルティは、価格や特典といった経済的な要素、安心感や共感といった心理的な要素、そして定期的に利用し続けるという行動的な要素が相互に影響し合いながら形成されていきます。
そのため、今回の結果では回答割合が相対的に低かった取り組みであっても、特定の顧客層や利用フェーズ、施策の設計次第では、ロイヤルティを高める重要な起点となる可能性があります。
重要なのは、調査結果を「正解」としてそのまま当てはめることではなく、自社が顧客との関係性の中で、どのようなロイヤルティを高めていきたいのかを明確にしたうえで、注力すべき施策を選択することです。本調査の結果を参考にしながら、自社の顧客特性やビジネスモデルに即したロイヤルティ施策を検討していくことが求められるでしょう。
顧客ロイヤルティの向上方法や現状の顧客ロイヤルティを測定する指標については、以下のコラムで解説しているのであわせてご一読ください。
顧客ロイヤルティは、単一の施策で高まるものではなく、顧客理解を起点に、コミュニケーションや体験を継続的に設計していくことで育まれていきます。
フュージョン株式会社では、CRM戦略~施策実行までのさまざまな支援実績をもとに、調査結果や顧客行動データを活かしたロイヤルティ向上施策の設計・実行をご支援しています。
定期購入モデルにおける顧客ロイヤルティの向上や、顧客との関係性構築に課題を感じている方は、お気軽にご相談ください。