顧客ロイヤルティはCRM戦略に欠かせない要素の一つです。フュージョンではCRM戦略を策定する際に、まず現状の顧客ロイヤルティを正しく把握することを推奨しています。
本記事では、顧客ロイヤルティの定義や重要性を説明したうえで、顧客ロイヤルティを高めるために必要な要素や可視化するための方法について詳しく解説します。
顧客ロイヤルティとは
顧客ロイヤルティとは、顧客が商品やサービスに対して愛着を持っている状態を指し、高い・低いで表される指標です。顧客ロイヤルティが高い顧客は、商品に満足しているだけではなく、企業や商品の理念・コンセプトに共感しています。これらの顧客はいわゆるファンであり、知人や友人に該当の商品を勧めるなど積極的な行動を取る傾向があります。
顧客ロイヤルティの重要性
顧客ロイヤルティの向上はLTVに直接的に寄与する重要な指標です。仮にロイヤルティが高くない顧客が商品の性能やコストに満足していたとしても、他の商品で同様のスペックを見つけたら乗り換えてしまう可能性があります。一方でロイヤルティが高い顧客の場合、商品のスペックだけではなく、商品へのこだわりやコンセプトにも共感し、愛着を持っているため、同様の他社商品に乗り換えるリスクが低くなるのです。
また、コトラーの「マーケティング4.0」では、カスタマージャーニープロセスを認知・訴求・調査・行動・推奨の5つの段階に分けて考えています。そして、カスタマージャーニプロセスのゴールを「購買」ではなく「推奨」としています。これは優良顧客とロイヤルカスタマーの分類でも明確化されているとおり、購買はあくまでCRMの過程であり、顧客ロイヤルティが最大化することで得られるゴールは推奨だということがわかります。
(出典):渡部 弘毅著「ファンをつくる顧客体験の科学「顧客ロイヤルティ」丸わかり読本」
顧客ロイヤルティと顧客満足度の違い
顧客ロイヤルティとしばしば混同して考えられがちな言葉に「顧客満足度」があります。顧客満足度は顧客ロイヤルティとは異なる定義があります。
端的に言うと、顧客満足度は商品やサービスにおける機能・性能、コストや購入直後の感情などへの評価を表す指標です。一方で顧客ロイヤルティは顧客が特定のブランドや企業に対して、どのくらい企業への信頼感を持っているか示す指標です。
顧客満足度は短期的かつ特定の取引や商品に対する評価であるのに対し、顧客ロイヤルティは長期的かつブランド全体に対する継続的な評価を表すものです。顧客満足度を高めることは重要な要素ではありますが、顧客満足度を顧客ロイヤルティに結びつけるためには、継続的な信頼関係の構築や価値の提供が不可欠です。
このことから顧客ロイヤルティは、顧客満足度よりもさらにステップアップした顧客の状態である、とも言えるでしょう。
顧客ロイヤルティの3つの観点
顧客ロイヤルティをより詳しく見ていくと、主に以下3つの観点に分類することができます。
- 心理ロイヤルティ
- 経済ロイヤルティ
- 行動ロイヤルティ
それぞれどのような特徴があるか見ていきましょう。
心理ロイヤルティ
心理ロイヤルティとは、顧客から見た企業や商品への心情を定義するロイヤルティです。具体的には、企業や商品に対しての信頼感や愛着の程度、その企業・商品を応援したいかなどの気持ちが高い状態であれば、心理ロイヤルティが高いとみなされます。
心理ロイヤルティは顧客の心情を測る必要があるため定量化しにくいものの、顧客ロイヤルティを構成する要素の中で最も重要な指標です。
経済ロイヤルティ
経済ロイヤルティとは、購入金額や購入回数で定義されるロイヤルティです。より頻繁かつ高額な購買であれば経済ロイヤルティが高い顧客とみなされます。一般的に心理ロイヤルティが高い顧客は経済ロイヤルティも高くなる傾向がある一方で、経済ロイヤルティが高いすべての顧客が心理ロイヤルティも高いとは言い切れない点には注意が必要です。
行動ロイヤルティ
行動ロイヤルティは顧客と接する回数で定義されるロイヤルティです。たとえば実店舗がある商品・サービスであれば、来店回数(購入をしない来店も含む)は行動ロイヤルティに含まれます。その他にも、アンケートに回答する・口コミを調べる・サービスサイトへアクセスするなど、顧客が購入や推奨に至るまでのタッチポイント全てが行動ロイヤルティの指標になります。
行動ロイヤルティは心理ロイヤルティと経済ロイヤルティを高めるために重要な役割を担う点もポイントの一つです。
顧客ロイヤルティの現状を把握するメリット
現在の顧客のロイヤルティを把握することは、顧客ロイヤルティを向上させる第一歩です。顧客ロイヤルティを把握すると、顧客理解が深まるため、顧客が抱えているインサイトがわかる点は大きなメリットの一つです。
また、顧客ロイヤルティを高めるうえでの課題が明確になれば、ペルソナやカスタマージャーニーマップの設計・見直しに役立てられます。CRM戦略の基礎設計となる部分を見直すことで、これまでの施策より顧客の視点に立ったコミュニケーション設計を立てやすくなり、全体の施策の成果が現れやすくなるでしょう。
フュージョンでは、顧客ロイヤルティの可視化はCRM戦略設計の課題設定段階に位置付けています。心理ロイヤルティや経済ロイヤルティを可視化し、課題を明確にできればその後の戦略設計や具体的な施策に落とし込む際に役立つでしょう。
なお、顧客のインサイトについては以下の記事で詳しく解説しています。
顧客ロイヤルティを可視化する方法
顧客ロイヤルティを可視化する代表的な方法として、NPS調査、NRS調査、顧客満足度調査があります。それぞれ顧客の満足度を測る指標ですが、調査で得られる数値は異なるため、どれか一つだけ調査するのではなく、全てを網羅的に実施するとよいでしょう。
本章では代表的な3つの調査について、それぞれの特徴と調査方法を紹介します。
また、フュージョンではこれらの調査に加えて、ドライバー体験頻度・体験琴線感度による顧客体験調査も行い、心理ロイヤルティを構造化・定量化します。
興味のある方は以下のページを参照ください。
NPS調査
NPS調査とは「Net Promoter Score(顧客推奨度)」の略で、対象の商品やサービスを他者に勧めたいと思う割合を数値化する調査です。NPS調査は推奨度を可視化できるため、顧客ロイヤルティを可視化できる特徴があります。
調査方法は非常に単純なもので、対象者に「商品をどの程度親しい人にすすめたいと思うか」を質問するだけです。回答は「0~10点」の11段階の中から選んでもらい、回答者全体の「推奨者」の割合から「批判者」の割合を引いて推奨度を算出します。
NRS調査
NRS調査は「Net Repeater Score(正味お客様継続率)」の略で、顧客の継続利用意向を数値化する調査です。NRSは顧客自身の継続意向がわかる調査のため、調査結果の信ぴょう性が高く、NPSに比べてスコアが高く出る点が特徴です。
調査方法は1年後の継続利用意向を顧客に質問し、高い継続利用意向を持つ顧客(リピーター)の割合から離反リスクのある顧客の割合を引いて算出します。
顧客満足度調査
顧客満足度調査は顧客が商品やサービスについて、現時点でどの程度満足をしているかを数値化する調査です。NPS・NRSでは他者に勧める、継続して利用するなどの「未来の行動」を数値化するのに対し、顧客満足度は現時点での評価に焦点を当てています。
調査方法は「該当するサービスや商品に対し、どの程度満足しましたか」という質問をし、回答者は5段階または7段階で評価するものです。設問数は任意で決められるため、詳しい意見を収集でき、サービスに対する悪い意見も聞ける点が特徴です。
顧客ロイヤルティ向上のための2つのマネジメント
顧客ロイヤルティを向上させるためには、行動ロイヤルティを活用したうえで主に心理ロイヤルティと経済ロイヤルティを高めるマネジメントが大切です。
前述した通り、顧客ロイヤルティには心理・行動・経済の3つのロイヤルティがありますが、心理ロイヤルティと経済ロイヤルティを向上させるためには、行動ロイヤルティで実施する施策が重要な役割を担います。
行動ロイヤルティは顧客体験と顧客行動に分類することができ、顧客体験は心理ロイヤルティ(ファンづくり)に影響し、顧客行動は経済ロイヤルティ(購買者づくり)に影響するからです。
心理ロイヤルティを向上させるためには、顧客体験の質を向上することが必要です。具体的には、カスタマーサービスの品質向上・接客現場のVOC(Voice Of Customer)活動などが挙げられます。
また経済ロイヤルティを向上させるためには、顧客行動の頻度を増やし良い顧客体験に触れる機会を創出することが大切です。具体的には、広告出稿やSEOによるコンテンツへの接触機会の向上、キャンペーンやポイント還元などの活用が挙げられます。
顧客ロイヤルティの可視化・向上はフュージョンにご相談ください
顧客ロイヤルティの向上はCRM戦略で目指すゴールの一つであり、LTVを意識したマーケティング施策では欠かせない指標です。顧客ロイヤルティの向上を意識した戦略を立案するためにはまず、現状の自社顧客のロイヤルティを正しく把握することが大切です。
フュージョン株式会社では、顧客ロイヤルティ可視化サービスを提供しています。自社の顧客のロイヤルティを把握したいが、ノウハウやリソースがなくお悩みの方はぜひ一度お問い合わせください。
また、顧客ロイヤルティの可視化だけではなく、その先にあるCRM戦略の策定やカスタマージャーニーマップの作成、具体的な施策立案に関しても対応しています。全体を通したご相談に関してはお問い合わせフォームよりご連絡ください。