かつては長く自社の商品・サービス、ブランドを支えてファンになってくれていたはずの自社の顧客が、ある日突然、他社に“スイッチ”してしまう。
そんな現象に悩んでいませんか。
この度、フュージョン株式会社では、株式会社ネオマーケティングと「浮気されてしまうブランドに関する実態把握調査(2025年2月実施)」を行いました。サプリメント、スキンケア、クレジットカード、動画配信サービスなど複数カテゴリにわたって、消費者が「なぜそのブランドを選び続けるのか」「なぜ別のブランドに乗り換えるのか」を明らかにしました。
【調査概要】 |
“良い商品・サービス”を提供しているだけでは、もはや顧客のロイヤルティは維持できません。選択肢の多様化や顧客の期待値の高度化に伴って、企業が顧客とどんな関係を築けているか、すなわちCRM(顧客関係マネジメント)の重要性が高まっています。
CRMは単なるツールやシステムの導入ではなく、顧客理解を基盤に「誰に」「何を」「どのように」提供するかを考えることから始まり、顧客の獲得・維持・育成を一貫して行うのが重要、とフュージョン株式会社は捉えています。
企業にとって、ロイヤルカスタマーを維持・育成することは売上維持だけでなく、ブランドの信頼性、LTVの最大化、そして広告効率や顧客獲得コストの最適化にも直結する重要なテーマです。
この記事では、今回の調査の結果を振り返りながら、ファン化に必要な「顧客ロイヤルティの維持・向上」のカギをCRMの観点で解説します。
調査結果概要:業界別で見える顧客の離反・リピート理由
はじめに、今回は下記の9商品カテゴリについて調査を実施しました。
【調査対象商品カテゴリ】
- サプリメント(プロテイン含む)
- スキンケア
- クレジットカード
- 自動車
- 生命保険
- スマートフォンの機種
- 通信キャリア
- 動画ストリーミングサービス
- キャッシュレス決済
ブランドをスイッチしたい理由・継続したい理由
まず、調査の中では、「自身で選んで購入・契約している商品の今後の継続意向」として、「今後も同じブランドを購入・契約したい」と「今後は違うブランドを購入・契約したい」のどちらに該当するかお聞きしました。
その結果、どの商材についても70%以上が「今後も同じブランドを購入・契約したい」と回答する結果となりました。
商品カテゴリによって商材の使用頻度や購入・契約目的が異なる分、それぞれの継続意向には多少のばらつきが出ています。
今回はこれらの9つの商品カテゴリのうち、特にCRMの重要性が高まっている6カテゴリを中心に、ブランドスイッチしたい理由や継続したい理由には、それぞれどのような傾向があるか確認します。
(今回の考察対象カテゴリ)
大分類 |
商品カテゴリ |
美容・健康 |
サプリメント、スキンケア |
金融・決済 |
クレジットカード、キャッシュレス決済 |
ライフステージ商材 |
自動車、生命保険 |
美容・健康(サプリメント、スキンケア)
今回の調査では、ブランドスイッチしたい理由として、サプリメントの場合は1位、スキンケアでは2位に「飽きたから」が挙がりました。
サプリメントやスキンケアといった商品は、継続購入が主軸のビジネスモデルであり、1回きりの購入では利益が出にくい性質があります。また、使用効果を実感するのに時間がかかり、個人の肌質や体質などにもその効果が左右されるため、その商品が合うかどうか評価が分かれる傾向があります。そのため、なんとなく購入を続けている中で別の新しい商品に変更したくなる可能性があり、同じく上位にランクインした「費用対効果が悪いから」という理由にもつながると考えられます。
一方で、継続購入理由についてみてみると、「購入しやすいから」と「品質が良いから」がともに1位あるいは2位と上位に挙がっています。
継続購入が軸であり、ルーティンとして利用される商品の場合は、そもそも手に入れづらいことは離脱の大きな原因になります。購入チャネルの豊富な用意や定期購入の仕組みなどは継続の前提条件になっていると言える結果でした。そのうえで、「品質の良さ」を顧客が実感できるような取り組みを行うことで、ブランドスイッチ理由のひとつである「費用対効果が悪い」ことを改善できると思われます。
金融・決済(クレジットカード、キャッシュレス決済)
クレジットカードやキャッシュレス決済については、どのような理由でブランドスイッチするのでしょうか。
「今後ブランドスイッチしたい理由」について、クレジットカードとキャッシュレス決済ともに「ポイント制度や割引などの特典が他と比べて魅力的でないから」が1位になりました。
クレジットカードもキャッシュレス決済も、日常的に使われる汎用性の高い商品カテゴリです。基本的な機能はどれも似ているため、わかりやすい差別化要素として経済的なお得感を感じられるポイント制度や割引といった特典が挙がりやすいです。
また、これらの商品カテゴリは、利用者が「お金を支払う」ために使われ、新しいブランドを使い始めたとしても、日常に馴染むと「あって当たり前」なものとして特段意識されにくくなります。サプリメントやスキンケアのように、使うことで貧血が改善されたり肌の透明感が増すなどの価値が感じにくいこともあり、結局「使うとお得である」という金銭的なリターンが重視される傾向が強くなります。
これらの要因から、ほかのブランドがよりお得なキャンペーンを打ち出すと、スイッチされやすくなると言えます。
継続理由についても見てみると、クレジットカードでは離反理由と同様に、「ポイント制度や割引の魅力」が1位に挙げられており、キャッシュレス決済でも2位にランクインしています。ここからも、「お得感」といった経済的価値が、継続利用の強いモチベーションとなっていることが読み取れます。
一方で、「自分のライフスタイルに合うから」という理由も見逃せません。キャッシュレス決済では1位、クレジットカードでも2位に入っており、これらの商材においては、経済的な価値に加えて「手間なく支払える」という利便性の高さも、継続理由として大きな意味を持っているようです。
ライフステージ商材(自動車、生命保険)
最後にライフステージ商材として、自動車と生命保険の2つについて考察します。自動車については、高価格帯の耐久消費財でもあり、ステータスが意識されるラグジュアリー商品にもなるという側面もありますが、今回はライフステージ商材としてカテゴライズしておきます。
そのうえで、今後ブランドスイッチしたい理由について見てみると、「自分のライフスタイルが変化したから」が自動車では1位(32.7%)、生命保険では2位(30.6%)でした。
自動車については、暮らし方に直結する商品カテゴリであり、家族構成や通勤スタイル、住環境の変化で求める機能や車種などが変わることから、このような結果になっているのでしょう。記事の冒頭で紹介した「自身で選んで購入・契約している商品の今後の継続意向」の回答結果でも自動車は継続意向が最下位でしたが、買い替える頻度が低い分、ライフステージの変化も相まって継続する必要性も低くなるのかもしれません。
生命保険についても、家族構成の変化などで必要な保障内容が変わるので、そのタイミングでのスイッチが検討されやすいと考えられます。
次に継続理由についてもみてみましょう。
自動車の継続理由として最も多かったのは「品質が良いから」(39.9%)であり、次いで「自分のライフスタイルに合うから」(35.1%)が続いています。
自動車は日々の移動手段としての安心感や信頼性が求められる商品であり、使用中に不満や故障がないことそのものが、継続の強い動機になりやすいと考えられます。また、通勤やレジャー、家族構成といった日常生活に密接に関わる存在であるため、「今の自分の生活にちょうど合っている」という実感も、乗り換えを思いとどまる理由になっているといえるでしょう。
生命保険においては、「自分のライフスタイルに合うから」(40.5%)が最も多くの回答を集めており、次いで「費用対効果が良いから」(19.5%)という声が続いています。保障内容が今の自分にとって過不足ないという納得感や、「この保険でしっかり守られている」という感覚が、継続意向を支えていると見られます。保険は日常的に使用する機会が少ない分、“選び直す理由がない=継続する理由になる”という構造も背景にあると考えられます。
ここまで解説した調査内容については、下記のリリースでも解説しています。あわせてご一読ください。
顧客ロイヤルティ向上のために企業が提供すべき価値とは?
商品カテゴリの違いや商品特性を踏まえるのは前提として、いずれの商品についても、顧客に継続して購入・利用してもらうためには、企業から提供される価値がその顧客にとって魅力的である必要があります。
CRM観点で企業が顧客のロイヤルティを高めるための提供価値については、下記のポイントが大切です。
顧客ロイヤルティの3つの観点を意識する
顧客ロイヤルティを高めるためには、「何を提供するか」と同時に、「どのように顧客との関係性を育てていくか」という視点も欠かせません。
フュージョン株式会社では、ロイヤルティを3つの側面から捉え、それぞれに応じた価値の設計が重要だと考えています。
経済ロイヤルティ
購入頻度や金額といった、企業に対する経済的な貢献度を表します。リピート購入やサービス継続など、数字として現れる行動です。
行動ロイヤルティ
購入以外の企業との接点──たとえばメルマガ開封、キャンペーン参加、アンケート回答など、積極的に関わっている度合いを指します。
心理ロイヤルティ
企業やブランドに対して「好き」「信頼できる」と感じる心のつながりです。明確な理由がなくてもその企業を選ぶような感情的な絆が土台となります。
商品カテゴリの特性を踏まえながら、これらのロイヤルティが高まるようなCRM施策を打っていく必要があります。
顧客ロイヤルティについて詳しく知りたい方は、下記のコラムもあわせてご一読ください。
顧客ロイヤルティを支える企業の3つの提供価値
そして、前述したロイヤルティを支えるのが、企業が提供する「価値」です。こちらも3つの方向性に整理できます。
金銭的価値
割引やポイント制度、特典など、直接的な経済的メリットは、ロイヤルティを生むための入口として有効です。
利便的価値
購入のしやすさ、ウェブサイト導線のわかりやすさ、顧客サポート対応のスピードなど、日々の体験の中で「使いやすい」と感じられることは継続利用を後押しします。
心理的価値
自分が“特別扱いされている”と感じたり、ブランドの世界観に共感したりすることで、企業とのつながりがより深いものになります。
これらの価値を意図的に設計し、ロイヤルティの度合いごとに最適なコミュニケーションをとることが、CRM施策として非常に重要です。
当社のCRM支援については、下記の事例ページでご紹介しています。
あわせてご一読ください。
顧客ロイヤルティ可視化・向上のご相談はフュージョン株式会社へ
今回のコラムでは、実際の調査データを読み解きながら、顧客の離反・継続購入理由や顧客ロイヤルティの維持向上に必要なポイントをご紹介しました。
顧客のロイヤルティの度合いには、顧客一人ひとりの価値観や生活スタイル、企業との関係性が影響しており、それを正しく理解し、データとして可視化することが、CRM改善の出発点となります。
フュージョン株式会社では、顧客ロイヤルティの可視化や向上のための施策設計、顧客データを活用したコミュニケーションの最適化など、企業ごとの課題に応じたCRM支援を行っています。
顧客ロイヤルティの可視化や向上はもちろん、CRMに取り組む中で抱えているお悩みがあれば、どのようなことでもお気軽にご相談ください。