「売上を前年比120%に」と言われたけれど、何から手を付ければいいかわからない。
「施策は打っているけれど、効果があるのかどうか不明…」
そんなマーケティング責任者・実務担当者の方へ。
CRM施策を成功に導くために欠かせないのが、KPI(Key Performance Indicator)です。
KPIとは、目標に向かって進むための「進捗確認の指標」。
漠然とした目標を、日々の行動に落とし込むための“道しるべ”のような存在です。
本記事では、CRMの文脈におけるKPIの設計方法と活用法について、実践的なステップと事例を交えてわかりやすく解説します。
<目次>
KPIとは?なぜ重要なのか
KGIとKPIの違い
CRMでのKPI例
KPI設定のステップ
KPIの適切さを確認する「SMART」の法則
KPIのモニタリングと改善
マーケティングやCRMの現場では、施策が「なんとなくの勘」や「担当者の経験」に頼って進められてしまうことが少なくありません。つまり、感覚的で属人的になりやすいのです。
こうした状況でKPIを導入することで、大きく3つのメリットが得られます。
まず1つ目は「可視化」です。KPIを定めることで、施策が目標に対してどの程度進んでいるかを数値で把握できるようになります。進捗状況が明確になることで、次に何をすべきかの判断がしやすくなります。
2つ目は「関係者の一体感」です。全員が同じ指標を共有することで、判断基準が統一され、チームや部署全体が同じ方向に向かって動きやすくなります。
そして3つ目は「改善の判断材料になること」です。KPIを設定することで、結果をデータとして振り返ることができるため、PDCA(計画・実行・評価・改善)のサイクルを正しく回すことが可能になります。
たとえば、メール施策を行う場合、KPIがないと「とりあえず配信しておく」といった場当たり的な運用になりがちです。しかし、KPIを設定していれば「開封率30%以上を目標に、件名をA/Bテストしてみよう」といったように、仮説検証型の取り組みができるようになります。
また、接客施策においても、単に「もっと丁寧に接客しよう」と言うだけでは効果は測れません。KPIを設定することで、「NPS(顧客推奨度)を月10ポイント向上させる」という具体的な目標ができ、施策の成果を明確に把握することができます。
このように、KPIはマーケティングやCRMの成功において、ブレない軸となる重要な存在です。
目標達成のプロセスを考えるうえで、「KPI」と並んでよく登場するのが「KGI」という言葉です。
KGI(Key Goal Indicator)とは「重要目標達成指標」と訳され、最終的なゴールを数値化したものを指します。企業や部門の戦略的な目標を定量的に示すもので、たとえば「年間売上10億円の達成」や「顧客満足度を90%以上にする」といった、最終的に“どうなりたいか”を示す指標です。
一方のKPI(Key Performance Indicator)は、KGIを達成するための中間的な指標です。言い換えると、KPIは“過程”を測り、KGIは“結果”を測る指標です。
KGIとKPIの関係性は、たとえば、以下のように整理できます。
このように、KGIを目標とする場合、それを達成するための複数のKPIを組み合わせて管理していくことが重要です。
CRM(顧客関係マネジメント)の施策を進めるうえで、「何をもって成功とするのか」を明確にしておくことは非常に重要です。
よくあるのが、「顧客満足度を高めたい」「顧客との関係性を強化したい」といった“ふんわりした目標”で施策をスタートしてしまい、実行したあとに成果を評価できないというケースです。
このような事態を避けるためには、KPIを適切に設定し、施策の効果を可視化できる状態を作る必要があります。
CRMでよく使われるKPIは、主に以下の3つのカテゴリに分類されます。それぞれが測定する対象や目的が異なるため、自社の課題や注力ポイントに応じて、必要なものを選ぶことが大切です。
このカテゴリは、CRMの取り組みが最終的なビジネス成果につながっているかを測るための指標群です。経営層への報告や、投資対効果を示す場面でもよく使われます。
たとえば、LTVが20%向上すれば、売上だけでなく評価や資金調達力にまで影響を与える場合があります。
CRMの多くはメールや会員サイト、アプリなどデジタルチャネルを活用して展開されます。このカテゴリでは、そうした接点におけるユーザーの反応や利用状況を測定します。
これらの指標は施策ごとのA/Bテストや改善施策にも活かしやすく、日常的にモニタリングすべきKPIです。
対面接客や実店舗での対応など、オンラインだけでは把握できない顧客との接点も重要です。オフラインでのCRM施策においては、以下のようなKPIが役立ちます。
たとえばアパレル業界では、「6カ月以内の再訪問があるか」をKPIにし、リピーター施策の効果を測っている企業もあります。
KPIの設定を行う際は、ステップに沿って組み立てることが重要です。
ステップ1:KGI(最終目標)を決める
ステップ2:KGIを達成するための要素を分解
ステップ3:各要素のKPIを設定
では、各ステップについて詳しく解説します。
KGIが曖昧なままでは、適切なKPIを設定することはできません。 KGIが売上目標など具体的な数値であれば、KPIも設定しやすくなりますが、「顧客満足度の向上」や「ブランド認知の拡大」などをゴールとする場合、目標達成の基準が不明確になりやすく注意が必要です。
また、「会社サイトのリニューアル」や「業務システムの導入」など、施策の実施自体を目標としてしまうと、成果の評価が難しくなります。「実施したものの、どのような効果があったのか?」と問われた際に、明確な説明ができないリスクがあります。そのため、KGIに定量的かつ測定可能な指標が設定されているかが重要です。
×悪いKGI例(曖昧で測れない)
〇良いKGI例(定量的で明確)
KGIが明確になったら、その達成に必要な要素をロジックで分解していきます。
たとえばKGIが「売上」であれば、次のように要素に分けて考えられます。
このように、KGIを構成する要素をブレイクダウンすることで、「何に取り組めば目標に近づけるのか」が見えてきます。
ただし、やみくもに要素を挙げるのではなく、現状のデータや課題をもとに、優先度の高いものに絞って分解することが重要です。
要素を分解したあとは、「いつまでに、何を、どの程度達成するか」を定めることで、具体的なKPIへと落とし込むことができます。
以下のKPIツリーの例を見てみましょう。
各要素に対し、「いつまでに」「どのような状態にするのか」を明確に設定し、KPIとして定義します。
KPI例(KGI:売上を年間12億円に)
ここでは“指標の設定”だけでなく、“それを達成するための施策やアクション”もセットで考えることがポイントです。
また、すべてのKPIを細かく追いすぎると、逆にリソースが分散してしまいます。最初は1〜3個程度に絞り、「課題に最も直結する指標」にフォーカスするのが現実的かつ効果的です。ここまでのステップを踏むことで、KPIは「ただの数字」ではなく、実務で機能する“生きた指標”になります。
■FAQ:KPIはどのくらいの粒度で設定すればいいの?
A: 正解はありませんが、「行動レベルまで落とし込めるか」が判断基準です。数値目標だけでなく、「その数値を上げるための施策」も明確になっていれば、適切な粒度といえるでしょう。
より具体的にKPIを設計したい方は、KPIツリーの設計に役立つテンプレートを含んだ資料『4ステップでできるCRM戦略設計の進め方』もお役立てください。
ここまでのステップを踏んでKPIを設定しても、そのKPIが本当に有効なのか、実行可能なのかが気になるところではないでしょうか?
「とりあえず数字を入れてみたけど、やり切れる気がしない…」
「KPIはあるけれど、なぜかチームが動かない」
そのような悩みは少なくありません。
そこで有効なのが、KPIの質をチェックするための「SMARTの法則」です。SMARTとは、目標設定の5つの条件の頭文字をとったフレームワークです。KPIがこの5つの要件を満たしていれば、実行性が高く、成果につながる可能性が高まります。
■FAQ:SMARTを全部満たしていないKPIはNG?
A: 完璧にすべてを満たす必要はありませんが、「Achievable(達成可能)」と「Relevant(KGIとの関連性)」は特に重視しましょう。現場で動かせてこそKPIです。
KPIは「設定して終わり」ではありません。 むしろ本番はそこからです。
どんなに適したKPIを設定しても、定期的にチェックされず放置された指標は、意味を持ちません。逆に、モニタリングと改善が仕組み化されていれば、KPIは組織にとって“動く指標”になります。
ここでは、KPIを成果につなげるためのモニタリング体制の構築と、改善方法について解説します。
KPIにはそれぞれ、“適した確認サイクル”があります。
たとえば、日々の業務に関わる指標(例:Webアクセス数やメール開封率)は日次・週次でチェックすべきですが、LTVやリピート率のような長期指標は月次や四半期での確認が現実的です。
指標ごとに「どのくらいの頻度で見直すか」をルール化することで、KPIは“運用される指標”になります。
モニタリングの目的は、「良し悪しを評価すること」ではなく、結果の理由を探ることです。
KPIが目標に届かなかったときは、その原因を特定し、次にどう改善するかを考える必要があります。逆に、目標を上回った場合も「なぜうまくいったのか?」を分析して、成功要因を他施策にも応用しましょう。
たとえば、
このように、数値の変動には必ず理由があるという視点で向き合うことが重要です。
KPI運用において最も効果的なのが、PDCA(Plan→Do→Check→Act)サイクルの仕組み化です。
このサイクルをチーム全体で共通認識として持ち、定例会議や報告の中に組み込むことで、KPIが「動きのある指標」に育っていきます。
フュージョン株式会社では、小売業界の企業において、店舗アプリのデータ分析を起点にKPIツリーを再設計・整理し、モニタリング体制を全社的に仕組み化する支援を行いました。
従来は、マーケティング戦略が属人的で再現性に乏しく、PDCAが回しづらいという課題がありましたが、本支援により、KPIツリー設計の定量化と社内共有、現場レベルでの腹落ち感のある仕組み化が実現しました。
これにより、組織全体でデータに基づいたマーケティング施策の運用が可能になり、再現性のある成果創出の土台が築かれました。
■FAQ:KPIを追いすぎて疲れてしまうのですが…
A: すべてのKPIを細かくチェックする必要はありません。目的と関連性が高く、変化が早いものに絞ってモニタリングし、定期的に“見る指標”と“保留する指標”を整理しましょう。KPIは「絞って、回して、育てる」のがポイントです。
KPIの設定は、単なる「指標の設定」ではありません。
事業目標・マーケティング戦略・CRM施策すべてをつなぐ、ビジネスの成長を導く“設計図”のようなものです。
しかし実際には、
といった声も少なくありません。
私たちフュージョン株式会社では、CRM戦略の立案から戦略設計、施策の実行・改善支援までワンストップでご支援しています。
こんな課題があれば、ぜひご相談ください。
課題の整理からでも、お気軽にご相談ください。
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