ダイレクトマーケティングとは、企業が顧客と直接コミュニケーションを取りながら、最終的に購買などの具体的な行動を促すマーケティング手法です。
ダイレクトマーケティングの歴史は古く、15世紀には既にカタログが印刷されビジネスに活用されていたと言われています。その後も、小売業を中心に、顧客へ直接商品を販売する手法として活用されてきました。1967年には、20世紀の三大広告人にも選ばれたレスター・ワンダーマンが「ダイレクトマーケティング」という言葉を用いて、現代的なマーケティング手法として定義しました。それ以降、さまざまな業種でダイレクトマーケティングの考え方が取り入れられ、マーケティング施策に活かされています。
ダイレクトマーケティングは古いマーケティング手法と思われがちですが、本質は今日でも通用する普遍的な考え方に基づいています。そして、顧客や見込み客と直接向き合う接点を活用し、コミュニケーションを取る方法は、ウェブ上で行うデジタルマーケティングにも活用可能です。
今回のコラムでは、ダイレクトマーケティングの本質と、デジタルマーケティングでも活かせる考え方をご紹介します。
| 【目次】 ・ダイレクトマーケティングとは ・ダイレクトマーケティングの本質 ・ダイレクトマーケティングは古い?よくある誤解 ・デジタルマーケティングでも使えるダイレクトマーケティングの視点 ・CRM領域のマーケティング支援はフュージョンにご相談ください |
ダイレクトマーケティングは、顧客のニーズを把握し直接コミュニケーションを取りながら、行動を促すマーケティング手法です。
直接的なコミュニケーションを重視したマーケティング手法には、One to Oneマーケティングもあります。One to Oneマーケティングは、ダイレクトマーケティングをより精密にした手法で、データを元に各顧客に対して個別化されたアプローチを行うものです。
One to Oneマーケティングの考え方は、アナログ施策ではもちろん、デジタルでの施策でも重要視される傾向にあります。これは、本コラムで主題としている「ダイレクトマーケティングの本質」をデジタルで実践すると、結果としてOne to Oneマーケティング手法が採用される(やりやすい)という関係性があるためです。
ここではダイレクトマーケティングについて解説します。
マスマーケティングとは、これまで広く行われていた、不特定多数の大衆に向けて同じメッセージを発信する手法です。代表的な例でいうと、テレビCMや新聞広告、交通広告などがあげられます。多くの人に届く半面、一人ひとりの関心や状況にあわせて細かく対応することは難しいという側面もあります。
一方のダイレクトマーケティングは、特定の個人やグループに向けて、直接的にアプローチする手法です。メールマガジン、DM(ダイレクトメール)、会員向けのLINE配信などがこれに当たります。年齢、購入履歴、興味関心といった情報をもとに内容を変えられるため、「自分向けの情報だ」と感じてもらいやすいのが特長です。
まとめると、マスマーケティングは画一的に情報を届け、ダイレクトマーケティングは個別的に情報を届けるというアプローチ方法に大きな違いがあります。
| 比較対象 | マスマーケティング | ダイレクトマーケティング |
| ターゲット | 不特定多数 | 特定の個人やグループ |
| コミュニケーション | 一方向 | 双方向 |
| 目的 | 認知度向上、ブランディング | 具体的な行動喚起、関係構築 |
| メッセージ | 画一的、標準化 | パーソナライズ、個別最適化 |
| 主な手法 | テレビCM、新聞広告、交通広告 | メールマガジン、DM、LINE配信 |
昨今の消費行動そのものの変化を受け、マス消費の時代は終わりつつあり、消費者一人ひとりの価値観や置かれた状況(文脈)を前提に考える必要がある時代になっています。
誰にでも画一的なメッセージを届けるのではなく、「この人はいま何を求めているのか」「どんな課題を抱えているのか」を踏まえたコミュニケーションが求められています。
その中で、改めて重要視したいのがダイレクトマーケティングです。
日本の総広告費に占めるインターネット広告費の割合は拡大を続けています。一方で広告主の集中や配信面の競争激化により、広告単価の上昇や態度変容につながりにくい配信が課題としてあります。「広告を出稿すれば成果が出る」という時代は終わりつつあり、広告に依存した施策だけでは中長期的な成長は難しくなっているのが現状です。
2025年 日本の広告費 - News(ニュース) - 電通ウェブサイト
また、データを取り巻く環境も変化しています。
サードパーティCookieの利用制限が進む中で、企業が自由に活用できるデータは大きく制限されつつあります。その結果、自社で取得・管理するファーストパーティデータの価値が急激に高まっています。
CRMツールを通じて顧客データを蓄積・活用することは、単なるデータ管理ではなく、顧客理解や継続的な関係構築の基盤となります。ダイレクトマーケティングは、購買履歴や行動データをもとに、顧客一人ひとりに最適な情報を届けることを前提とした手法であり、この流れと非常に相性が良いと言えます。
ダイレクトマーケティングの本質はどのようなものなのでしょうか。
ダイレクトマーケティングの生みの親であるレスター・ワンダーマンの書籍「ワンダーマンの「売る広告」」では、成功するダイレクトマーケティングカンパニーが知っておくべき19のルールが示されています。本章では、その中でも特に本質的な部分を以下4つご紹介します。
(参考資料)レスター・ワンダーマン著「ワンダーマンの「売る広告」」翔泳社(2006/10/11)
ワンダーマンは、マーケティングの主役はプロダクトではなく顧客であると言います。
The Consumer, Not the Product, Must Be the Hero
彼は、プロダクトアウトではなく、マーケットインのスタンスで顧客ニーズの把握や課題解決を行うのが重要であると説きました。実際、顧客中心の視点によるマーケティング戦略の策定は、昔だけでなく現代においても重視されています。何の商品が何個売れたかを見るよりも、誰がいくら買ってくれたのかを把握することで、より個々の顧客に合わせたマーケティング施策を検討でき、LTVの最大化に結び付けることが可能です。
ワンダーマンは、顧客や見込み客に対して、一人一人を理解したうえで適切なコミュニケーションを取ることが重要だと言います。
Communicate with Each Customer or Prospect as an Audience of One
BtoB、BtoC問わず、見込み顧客や顧客と企業との間には、さまざまなタッチポイントが存在しています。顧客の立場としては、そのタッチポイントがアナログなのかデジタルなのかは強く意識していません。複数のタッチポイントを行き来している顧客に対し、きめ細かくアプローチするためには、受け取る顧客視点でのコミュニケーションシナリオをしっかり組み立てる必要があります。
こちらは顧客に向けたコミュニケーション設計書の例です。
マーケティング戦略の一つであるCRM(顧客関係マネジメント)は、このようなコミュニケーション設計書を作成する際に重要な役割を果たします。
CRMとは顧客行動や購買履歴をもとに、顧客との関係性の維持や顧客満足度の向上を狙う手法全般のことです。いわばCRMは「顧客起点のビジネス戦略」とも捉えることができるため、CRMに取り組むことは、ダイレクトマーケティングの本質に基づいていると言えるでしょう。
先ほどご紹介した顧客コミュニケーション設計書のテンプレートは、下記のページからダウンロードできます。ぜひご活用ください。
ワンダーマンは、見込み客や個々の顧客を理解した上で、商品やサービスの認知だけではなく、顧客の行動そのものに変化を起こす広告こそ重要であると述べています。そして、広告自身が利益を生み出す必要があるとしています。
Advertising Must Change Behavior, Not Just Attitudes
The Next Step: Profitable Advertising
ダイレクトマーケティングにおける広告は、顧客のアクションを促すことにこそ意味があります。ダイレクトマーケティングの代表的な手法であるダイレクトメール(DM)は、顧客からの直接的な反応を得られるプロモーションメディアとしてよく使われます。
以下は、ダイレクトマーケティングの代表的な手法であるダイレクトメール施策を活用したLTV最大化の事例です。
前述したルールを踏まえて「広告の効果は計測可能であり、結果の説明ができなければならない」とも、ワンダーマンは主張しています。効果検証ができる広告であれば、再現性をもたせて継続実施が可能です。
The results of advertising are increasingly measurable; they must now become accountable
実施した施策の効果検証が行われなければ、結果に基づく意思決定ができず、マーケティングのPDCAサイクルを回せません。結果に基づく意思決定をするためにも、昔から現在に至るまで変わらず重要とされています。
昔からダイレクトマーケティングで語られていることは、現在のデジタルマーケティングでも通用することがおわかりいただけたでしょうか。
ダイレクトマーケティングは、古いマーケティング手法と思われがちです。しかし、ご紹介した本質を踏まえると、決して色あせない伝統的かつ有用なマーケティング手法だとも言えます。
ダイレクトマーケティングは、古いマーケティング手法だと考えられる以外にも、さまざまな誤解をもたれています。以下では、よくある代表的な誤解を3つ挙げます。
ダイレクトマーケティングを通信販売だと捉えられるのは、歴史的に見ると、仕方がない部分があります。また考え方が一番当てはまる業界が通信販売であることは、否定できません。
しかし、冒頭でご紹介したレスター・ワンダーマンが再定義したダイレクトマーケティングは、業界ではなくマーケティング手法です。顧客の発掘(アクイジション)から、顧客の育成・定着(リテンション)まで、またその両方に影響を与えるブランディング等、さまざまなマーケティング手法を包含するマーケティングの考え方そのものを指します。そのため、小売・流通業をはじめ、金融業界や航空業界等さまざまな業界で活用されています。
最近では「メールマーケティングもデジタル版ダイレクトメールなので、ダイレクトマーケティングだ」という認識をされている方もいますが、よくある誤解です。
メディアに関して言えば、ダイレクトマーケティングはメディアニュートラルのスタンスをとり続けています。メディアニュートラルとは、特定のメディアを軸にメディアプランニングするのではなく、あらゆるメディアを横並びで考え、顧客との接点を最適化する考え方です。
そのため、ダイレクトマーケターは顧客と双方向のコミュニケーションを取るために一番効率的で最適なメディアが何かを常に考えています。
ダイレクトレスポンス広告や検索連動型広告、バナー広告等のデジタル広告、ダイレクトメール等も含めた多種多様なメディアを活用し、双方向のコミュニケーションを実現しクライアントの課題解決につなげるのがダイレクトマーケティングです。
ダイレクトマーケティングでは、クーポンや割引券を使うことはありますが、これはダイレクトマーケティングに限ったことではありません。
利用者を特定しない「1回限り」の関係性しかもたないのであれば、それはクーポンを使った販促に過ぎず、ダイレクトマーケティングとは本質的に異なります。
ダイレクトマーケティングは、相手を特定できるデータ(古くは住所や名前、メールアドレス)を活用し、継続的に双方向のコミュニケーションを実現するマーケティング手法だからです。
このように捉えると、ダイレクトマーケティングは、特定のツールやキャンペーン手法を指す言葉ではありません。
顧客一人ひとりを理解し、関係を育て、価値を提供し続けるという、マーケティングそのものの本質にきわめて近い考え方だといえます。
デジタルマーケティングでは、ダイレクトマーケティングの本質をどのように捉えればよいのでしょうか。4つの視点で、置き換えてみます。
顧客との継続的な関係を構築するためには、顧客ニーズに答える良質なコミュニケーションが必要です。そのためには、以下の4つのBestを提供する必要があります。
もし顧客が悪い体験をしたのであれば、その企業の商品を購入しないどころか、広告に見向きもしてくれません。
たとえば、ECサイトで初回購入を迷っている顧客に対しては、カートに商品を追加してからサイトを離脱するタイミングで、買い忘れがないかポップアップ通知を表示させるのは効果的でしょう。さらに、既存会員との関係性を深めたいのであれば、メールでのコミュニケーションだけではなく、顧客の誕生月や再購入のタイミングでダイレクトメールを活用し、特典を送るのも良質なコミュニケーションと言えるでしょう。
実際に、優良顧客向けに顧客コミュニケーションを設計する場合、下記のように考えられます。
このように、上記4点を踏まえ適切なセグメントに対してツールやコンテンツを変えるなどして、顧客ファーストなコミュニケーションを図りましょう。
ダイレクトマーケティングでも、データの活用は基本です。デジタルマーケティングでは、ダイレクトマーケティング以上にさまざまなプラットフォームを経由し、多様なデータを収集します。その中でも、行動データを可視化し収集することが大切です。
収集したデータを、MAに代表されるマーケティングテクノロジーと組み合わせることにより、顧客ごとにパーソナライズされたコンテンツを、顧客に直接届けることができます。
たとえば、化粧品や消耗品など、再購入のタイミングがある程度予想できる商材の場合は、顧客が再購入をする時期にあわせて、クーポンや関連するおすすめ商品をメールなどで送付するなどのアイデアがあります。
この際に一人ひとりに対応するための最適化された接点はどこかを考える上では、前述したメディアニュートラルの考え方が重要です。
また、下記は実際に一人ひとりに最適化した場合の顧客コミュニケーションの例です。
行動に変化を与えるというのは「顧客の反応を得ること」です。
良い反応を得るためには「顧客を第一で考える」で説明した4つのBestの中でも特にBest Experience、顧客にとって今必要な一番良い体験をしてもらうことが大切です。一番良い体験をしてもらうためには、顧客の行動に変化を促すビッグアイデアとクリエイティブが重要と言えます。
ダイレクトマーケティングでクリエイティブを検討する場合は、さまざまなメディアで耐えうるビックアイデアを検討しなければなりません。また、メディアごとに最適化されたクリエイティブ開発も必要です。上記2つの完成度によって、顧客に提供される体験が変わります。
たとえばデジタルマーケティングの場合は、商品ページ(ランディングページ)を作成することもしばしばありますが、ここでのCTAの設置場所やクリエイティブは顧客からの反応を最適化するために重要な要素です。この際に重要なのは、顧客が商品について十分に理解し、購入を検討しはじめたタイミングを十分に考慮したうえでCTAの設置場所を検討することです。
また、反応を促すクリエイティブは、強いメッセージが逆に行動を促さないケースもあるので、細心の注意を払う必要があります。
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ダイレクトマーケティングにおいては、施策のレスポンスを計測し結果や効果を検証します。
デジタルマーケティングにおいても、デジタルテクノロジーを活用したプラットフォームを活用することで、さまざまな接点での計測がダイレクトマーケティング以上に簡単にできます。また、ダイレクトマーケティングではなかなか計測できないアトリビューション分析を用いた効果なども計測可能になりました。
具体的には、テレビCMやダイレクトメールなどのプロモーションを実施した際に、サイト上における商品の検索流入が増加し、ECサイトの売上が向上するケースなどは代表的な例です。
一方で、多くのデータを適切に判断するためには、適切なKGIやKPIの設定と正しい接点での計測が前提にあります。
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ダイレクトマーケティングとは、企業が顧客と直接コミュニケーションを取り、最終的に購買などの具体的な行動を促すマーケティング手法のことです。
ダイレクトマーケティングは、単なるマーケティング手法ととらえるのではなく、さらに普遍的な、根本の部分を理解したうえで実務に活用できるものです。
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