BtoBマーケティングとは、企業が他の企業に対して商品やサービスを提供する際に行う一連のマーケティング活動を指します。戦略の立案から施策の実行、そしてその効果検証までが含まれます。
以前は、BtoB企業の多くがマーケティングをあまり重視していない傾向がありました。しかし、2000年代以降、マーケティング部門の独立や体制強化が進み、戦略的なマーケティング活動が徐々に浸透してきました。
現在では、購買担当者の情報収集行動の変化や、社内外のコンプライアンス強化、デジタルメディアの普及、そして多種多様なCRMやMAなどのツールの登場により、マーケターが担う役割は以前に比べて格段に広がっています。
そこで今回のコラムでは、あらためて「なぜBtoB企業にとってマーケティングが必要なのか?」という基本に立ち返りながら、BtoBマーケティングの背景や特徴、実践する際のポイントについて分かりやすくご紹介します。
かつてのBtoB企業では、商品やサービスは開発・生産部門が作り、営業部門が中心となって顧客を開拓・商談・クロージングを行うという流れが一般的でした。営業部門や開発・生産部門は「花形部門」とされ、企業活動の中心的な役割を担っていました。
一方で、当時のマーケティング部門は企業広告や広報、販促活動などを担う部門に過ぎず、新規顧客獲得を目的とした活動は、営業の一部、または営業支援の立場として位置づけられていました。マーケティングは“戦略”というより“補助的役割”と見なされていたのです。
しかし、企業を取り巻く環境の変化によって状況は大きく変わりました。商談前・商談中・商談後と、あらゆる購買プロセスにおいて、営業と連携した統合的なマーケティング活動の必要性が高まったのです。
特に、購買担当者や意思決定者の情報収集行動の変化、デバイスやデジタルメディアの普及などにより、マーケティングの重要性は急速に増しています。
実際、最近の調査では「84%の購買決裁者が、営業担当と接触する前に購買の意思決定に大きく影響する情報に触れている」と報告されています(株式会社wib調査より)。
特に20〜30代の若手決裁者の約95%が、営業に会う前に判断材料に触れていたと回答しており、40代で約85%、50代でも75%と、年代を問わずその傾向は強まっています。
つまり、営業と接触するタイミングでは、すでに購買プロセスの多くが進んでいるのです。
また10年以上前、米国のBtoBマーケティング企業JV/M Inc.は「顧客が営業担当者に接触する時点で、購買プロセスの57%が完了している」との調査結果を発表しており、今でも多くの業界関係者に引用され続けています(MLC Customer Purchase Research Survey 2011)。
これらの背景には、企業の中で“デジタルネイティブ世代”が重要な意思決定ポジションに就いているという事実があります。彼らは情報収集をデジタルで行うことが当たり前であり、企業の購買でも“自分にとって意味のあるブランド体験”を求めています。
セールスフォース・ドットコムの調査でも、「企業が提供する体験は、商品やサービスと同じくらい重要である」と答えた人は、一般消費者で79%、法人顧客では85%にのぼりました(詳細:「コネクテッドカスタマーの最新事情」第4版、2021年1月)。
このように、BtoC・BtoBを問わず、「体験」が購買の重要な決め手になっていることがわかります。
ここでは、BtoB企業がマーケティングを実施する際に押さえておくべき「ビジネスの特徴」と、それを踏まえた実践のコツについて解説します。
BtoBビジネスには、以下のような特徴があります。
【BtoBビジネスの特徴】
これらは、個人が感情や直感で購買行動を起こしやすいBtoCビジネスと大きく異なる点です。
BtoCとの違いをわかりやすくまとめた比較表を、以下に掲載しています。
より詳しくは、別コラム「BtoBビジネスの特徴と購買行動モデルの5ステップ」をご覧ください。
BtoBマーケティングでは、自社の商品やサービスを選んでもらうために、企業内に存在する「多数かつ多層」の関係者たちの「論理的な購買プロセス」に寄り添い、「長期にわたる意思決定の過程」で最適な関係を築くことが重要です。
そのためには、下記のような設計が非常に役立ちます:
これらのBtoBビジネスの特徴を理解したうえで、自社を取り巻く内的・外的環境を見直したり、自社の商品・サービスの強みや提供価値を深掘りしていくことで、マーケティング活動で本当に解決すべき課題を発見し、優先順位をつけることが可能になります。
BtoBマーケティングを効果的に進めるためには、前述のBtoBビジネスの特徴を踏まえて、以下の3つの観点で工夫することが大切です。
BtoBでは、購買に関与する関係者が多く、しかも複数の階層にまたがることが一般的です。
そのため、取引相手の担当者やその上司だけでなく、一見見えていない社内のキーパーソンや、決裁に影響を与える人物が存在することを前提にマーケティングを設計する必要があります。
ビジネスの規模や商材の性質によってステークホルダーの数や役割は異なりますが、誰がどの段階で意思決定に関与するのかを可視化することは、戦略設計の第一歩です。
BtoBの購買プロセスは、感情よりも論理と合理性に基づいて進みます。
そのため、顧客の検討段階ごとに「どの判断材料が必要か」「どんな情報が次のアクションを後押しするか」を見極め、適切なタイミングで提供することが重要です。
限られた自社リソース(人的・物的)をどう活用し、どのチャネルや手法でアプローチするかを計画し、購買プロセス全体を支援できる体制を整えることが求められます。
BtoBでは、購買の意思決定に至るまで長期間にわたるケースが多く見られます。
場合によっては、年度をまたぐような検討期間になることも珍しくありません。
だからこそ、購買プロセスの前後も含めた中長期的な関係構築が鍵となります。
検討が進んでいる期間だけでなく、それ以前・以後のコミュニケーションでも信頼を積み重ね、選ばれる関係性を築いていくことが重要です。
かつては、欧米のBtoB企業に比べて「一歩遅れている」と言われていた日本企業のBtoBマーケティングですが、近年の急速な社会環境の変化を受け、日本企業のマーケティングも大きく進化を遂げつつあります。
現在では、欧米企業とのギャップも徐々に縮まってきていると言えるでしょう。
とはいえ、企業の購買担当者や意思決定者の目線から見ると、まだまだ改善の余地があるのも事実です。
BtoB企業にとって、マーケティングの継続的な進化は、今後ますます重要なテーマになっていくでしょう。
より実践的な内容については、以下の関連コラムもぜひご覧ください。
フュージョン株式会社では、BtoB企業向けのマーケティング支援を幅広く行っています。
中でも、新規顧客開拓に向けたダイレクトメールの企画・制作支援には多数の実績があり、全日本DM大賞での金賞グランプリなど受賞歴も豊富です。
「自社の新規顧客開拓、どこから始めればいい?」とお悩みの方は、ぜひ一度、フュージョンにご相談ください。