こうした“新規施策疲れ”を感じたときにこそ、既存顧客との関係性を向上させるCRM(Customer Relationship Management)の考え方が効いてきます。CRMは顧客生涯価値(LTV)を向上させ、売上拡大や利益向上を目指すための考え方・手法として注目されています。
国内市場では、人口減少や少子高齢化を背景に「新規顧客のパイ」が縮小しつつあります。
その結果、顧客獲得単価(CPA)は年々上昇し、従来のように新規獲得施策を積み重ねるだけでは、投資対効果が合いにくい状況が常態化しています。
こうした環境下で多くの企業が直面しているのが、「初回購入で終わってしまう」顧客の多さです。
新規獲得には成功しているものの、2回目以降の購入につながらずLTVが伸びない、という構造的な課題に対する打ち手として、CRMマーケティングがあらためて注目されています。
背景の一つは、顧客体験(CX)重視の流れです。
購買チャネルがオンライン・オフラインを横断してシームレスにつながる中で、顧客は「自分の状況や関心に合った体験」を当然のものとして期待するようになりました。一律的なコミュニケーションでは、関係性を深めることが難しくなっています。
さらに、プライバシー保護規制の強化やブラウザによるCookie制限により、サードパーティデータに依存したターゲティングは限界を迎えています。その結果、自社で保有する購買履歴や行動データといったファーストパーティデータを基点に、顧客との関係性をどう設計するかが、マーケティングの成果を左右するテーマとなりました。
このように、「初回購入から次のアクションへどうつなげるか」という視点でCRM施策全体を設計することが、いま多くの企業に求められています。
F2転換を含むCRM施策の考え方や設計の全体像については、以下の記事で詳しく解説しています。
CRMについては、基礎から取り組み事例までをまとめた資料を公開しているので、ご興味のある方はご活用ください。
CRMに取り組むうえで、デジタル施策の取り組みが全盛の時代においても、紙のダイレクトメールの強みが再評価されています。
DMは「届く」という物理的な体験を提供できる数少ないメディアです。封書やはがきがポストに入っているだけで、受け手は「自分宛に何かが来た」と認識します。この直感的な体験こそが、DMの強みです。そして、紙という媒体は、視覚だけでなく触覚をはじめ五感に訴えられるメディアです。厚みや手触り、封筒を開ける動作そのものがブランドとのインタラクション(接点)になり、デジタル広告では得難い「公式感」「丁寧さ」「信頼感」をもたらすことができます。
| オンライン施策 Web出稿、オウンドメディア、デジタルデバイス、ソーシャル等 |
オフライン施策(DM等) 本テーマに即してDMを念頭に置きます |
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| 質感 |
・質感≒Webモニタ上の投影に限られる |
・五感に訴えることができる |
| 保存性 |
・圧倒的な情報量に埋没しやすく、保存性も低い |
・特にDMにおいては、保存性は高い |
| 費用対効果 |
・一人あたりの実施コストは圧倒的に安い |
・一人当たり実施コストはオンラインに比べ高い |
DMのマーケティングにおける役割や、効果的なDM作成方法については、以下の記事で解説しているのでご一読ください。
また、オンライン施策とオフライン施策のメリットを活かしたシナリオの構築方法や具体的な設計ポイント・注意点について解説した資料をご用意しています。ぜひ参考にしてください。
とはいえ紙DMも万能ではありません。デジタル施策と違い、郵送費と印刷費が発生し、通数が増えるほど費用対効果を出しにくくなりがちです。
加えて、2024年10月より、日本郵便が郵券代の値上げを実施したのは記憶に新しいところです。また、パフォーマンスの問題もあります。内容を一律にした大量配布型のDMでは、業界によっては反応率が低下している傾向にあります。最後に効果測定のハードルです。Web広告のようなピクセルベースのトラッキングが難しく、「送って終わり」になりやすい点がマーケターを悩ませてきました。
このような、「郵送・印刷費の上昇」「内容一律による反応率低下」「精緻なトラッキングの難しさ」という3つの課題とどう向き合い、CRMでの施策取り組みにおける有効なツールとして活用していくかが問われています。
これらの課題を解決する鍵は、「パーソナライズ」です。
CRM基盤とMA(マーケティングオートメーション)あるいはCDP(カスタマーデータプラットフォーム)を連携させ、デモグラフィックな属性データや、購買履歴やライフイベントなどのデータを参照します。そうすることで、一通ごとに文面やオファー、クリエイティブを差し替えて、よりターゲット1人1人に合わせた個別最適なDMを作り、コミュニケーションの深度を高めることが可能です。
例えば、顧客の年代ごとに内容を変えたり、バースデーには限定特典を送ったり、また複数回購入済みのロイヤル顧客にはアップセル提案を送るといった具合です。顧客データと目的ごとにセグメントすることはもちろん、個別にパーソナライズされたDMは顧客の心を動かし、アクションを促します。
印刷技術においても、デジタル技術が成熟し、可変印刷・小ロット印刷が実用的になりました。1通ごとに内容を変えて訴求するのはもちろん、Webで誘導するQRコードもユニークにしておくことで、アクセスログの解析精度も高まります。開封後のWeb閲覧や購入情報までトラッキングが可能となり、アナログとデジタルの融合により、具体的な効果検証が可能となります。
ここからは、フュージョンで実際にご支援した例をもとに、パーソナライズDM活用のシナリオや成果について解説します。
アシックスジャパン株式会社では、顧客名や購買履歴を1人1人可変で印刷し、パーソナライズDMによって高い効果を発揮しました。高単価商材でありながら売上は計画比1.5倍、ROIは前年比125%を達成しました。新規会員獲得数は計画比152%、会員登録率も3.3%改善し、個別最適なコミュニケーションが顧客の心に響き、アクションを後押しした好例と言えます。
売上アップ効果を発揮しただけでなく、パーソナライズした二次元コードから顧客のWEB行動をトラッキングし、効果測定と行動分析を実施することで顧客理解を深めることにも成功しています。
休眠顧客の再活性化でも、パーソナライズDMが効果的だった事例があります。
いなげやのポイント失効告知DMでは、会員ごとに「保持しているポイントと有効期限」を可変印字し、DMを送付しました。自分が持っているポイントを具体的にお伝えすることで、お客様の損失回避の感情を喚起することに成功しました。結果、送付者の25.6%がポイント失効前に来店し、未送付者との差は19.4ポイントに達しました。さらに再来店した会員の平均購入金額は4,012円で、単なる“来店”にとどまらない売上回復効果も確認されています。
DMは五感を刺激できる特別感を顧客にもたらすだけではなく、その内容をパーソナライズすることにより、さらに読み手の「自分ゴト化」を強力に促せる戦略的なメディアとなります。
1通ごとに可変にするだけの属性データを持ちにくいBtoB領域においても、ターゲットの解像度を上げ、セグメントすることにより成果を上げていくことが可能です。県別情報を差し込んだ箱型DMを送付した株式会社エンリージョンの取り組みが好例です。
記憶に残る箱型パッケージを開けると、そのエリアの担当者の紹介、及び該当エリアの求人情報が見られる設計としました。地域密着のオファーによって「これは自分に関係のあることだ」と自分ゴト化を促し、96件の問い合わせ・資料請求を獲得。架電前の接続率が向上し、商談率は3.8%に達しました。
これらの事例が示すように、パーソナライズDMは「誰に・いつ・何を届けるか」を緻密に設計することで、CVRや商談率といったKPIを着実に押し上げます。
パーソナライズDMの成功には、以下の3つの設計がカギになります。
さらに、CRMならではの強みとして、既存顧客を活用した収益の安定性や高LTV層への集中投資が可能です。
デジタル印刷やMAツールの進化により、少部数かつリアルタイムなDM発送も現実的になりました。たとえば「カート離脱→数時間後にクーポンDM」という施策も実行できます。
加えて、オフライン×オンラインの統合分析も重要です。ユニークQRやWeb連携で施策効果を可視化し、次回施策の改善にもつなげやすくなります。
今やDMは、ただの印刷物ではなく、データと連携する“戦略的チャネル”としてCRMの中心を担う存在となっています。
今、顧客が求めているのは「自分の状況や嗜好にぴったり合った提案が、自分のために届くこと」です。そこに、紙という意外性のあるチャネルが掛け合わさると、ブランドとの接点は、単なる情報提供ではなく記憶に残る体験になります。
国内市場の縮小やCookie規制が進むほど、自社のファーストパーティデータを活用したCRMの重要性は増す一方です。パーソナライズDMは、そのファーストパーティデータを「顧客が体験できる形」に変換するアプローチと言えます。
フュージョン株式会社では、CRM戦略設計からMA連携、クリエイティブ制作、印刷・発送、効果測定までワンストップで支援しています。
「既存顧客のLTVを底上げしたい」
「デジタルだけでは反応率に限界を感じている」
「紙DMとMAツールとの連携についてアドバイスが欲しい」
などのお悩みがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。