新規顧客の獲得にどれだけ力を入れても、「初回購入で終わってしまう」ケースが多いと、売上やLTV(顧客生涯価値)の向上にはつながりにくくなります。
実はこの壁を乗り越えるカギが「F2転換率」、すなわち“2回目の購入”に至る顧客の割合です。
F2転換率の改善は、CRM(顧客関係マネジメント)におけるリピート施策全体の効果を左右する指標のひとつです。F2を増やすことができればF3・F4と継続的な購入へつながりやすくなり、LTVの底上げにも貢献します。さらに、新規獲得に比べてコスト効率が高く、限られたマーケティング予算内でも成果を最大化しやすい利点があります。
本記事では、F2転換率がCRM施策において重要な理由と、実際にF2転換率を改善することで得られる効果、さらに成功事例や具体的なアクションまでを解説します。
F2転換率とは?顧客の“次の購入”を引き出す鍵
F2転換率とは、初回購入者のどのくらいの割合が2回目の購入に至ったかを示す指標です。
F2のFは「Frequency」(頻度)を略しており、購入回数を表します。数字はリピート回数を指しているため、3回目の購入であればF3、4回目の購入であればF4と表現します。
F2転換率はリピーターの獲得施策の成果や、商品・サービスに対する顧客満足度を測るために活用できるもので、CRM(顧客関係マネジメント)戦略において非常に重要な指標のひとつです。
再購入に至る割合を見ることで、商品・サービスへの満足度や初回体験の質、フォロー施策の有効性などを客観的に評価できます。特にBtoC領域では、新規顧客をリピーターに育てるフェーズがLTV最大化の要となるため、F2転換率を定期的にモニタリングすることが欠かせません。
F2転換率の計算式
F2転換率は、以下の計算式で求められます。
F2転換率(%)=2回目の購入者数÷初回購入者数×100 |
たとえば初回の購入者が5,000人、2回目購入者は1,500人だったとします。上記の計算式に当てはめると1,500÷5,000×100=30となり、F2転換率は30%と求められます。
仮に商品が初回10,000人に購入されたとすれば、2回目は3,000人の購入が期待できることがわかるでしょう。
F2転換率の平均と相場感
F2転換率は業種や商品の性質によって大きく異なりますが、一般的には0~50%程度と幅広い傾向があります。
たとえば、食品や飲料など日常的に消費される商材ではF2転換率が高くなりやすく、逆に衣料品や季節性商品のように購入サイクルが長い商材は、F2が低めになる傾向があります。
さらに、同じ衣料品でも、靴下やTシャツのような日用品と、水着や浴衣、スキーウェアといった季節限定品では、F2転換率に大きな差が出ます。
そのため、自社商品・サービスのF2転換率が高いのか低いのか判断するには、同業種・同カテゴリ商品と比較することが大切です。
F2転換が重要な3つの理由
初回購入で終わってしまう顧客が多いと、いくら集客してもビジネスの収益性は伸び悩んでしまいます。
F2(2回目購入)への転換を増やすことは、CRM戦略において非常に重要なアクションです。この章では、「なぜF2転換が重要なのか?」を3つの観点から解説します。
集客コストの削減(マーケティング「1:5の法則」)
マーケティングにおける「1:5の法則」とは、新規顧客の獲得コストは、既存顧客をリピートに導くコストの5倍かかるという考え方です。
この法則は、限られた予算内で効率よく売上を伸ばすには、既存顧客の維持・育成が重要であることを示しています。
たとえば、新規顧客を1人獲得するためには、広告出稿・SNSキャンペーン・無料サンプル・初回割引など、信頼形成までに多くのコストと時間が必要です。仮に5,000円をかけて1,500円の商品を購入された場合、初回では赤字です。
一方、すでに購入経験のある顧客には、リマインドメールやLINE配信、レコメンド施策など低コストのアプローチで再購入を促すことが可能です。すでに商品やブランドの価値を理解しているため、購入検討のスピードも速く、転換率も高くなります。
つまり、F2転換率を高めることは、そのまま集客コストの最適化=効率的な利益創出につながります。
なお、CRMについて、詳しくはこちらの記事で解説しています。
F2が増えればLTVも伸びる
F2転換率を高めることは、単なる集客コストの削減にとどまらず、LTV(顧客生涯価値)の向上にもつながります。
LTV(Life Time Value)とは、1人の顧客が初回購入から最終購入までの間に企業にもたらす利益の総額を指します。初回購入で離脱した顧客のLTVは当然ながら低くなりますが、F2(2回目購入)に転換すれば、その後のF3・F4といった再購入につながりやすくなり、利益貢献は数倍に膨らみます。
たとえば1回の購入で1,000円の利益が出る場合、F3まで進めば3,000円、F5まで続けば5,000円というように、顧客1人あたりの価値が大きくなっていきます。
また、F2以降の顧客には、継続的なメルマガ、パーソナライズ提案、会員ランク制度など、CRM施策で顧客ロイヤルティを高めるアプローチも可能になります。これにより価格訴求に頼らずとも購入が継続され、利益率の高いビジネスモデルが構築されていきます。
F3・F4と続けて買うきっかけになる
一般的に、F3以降のリピート率はF2よりも高くなる傾向があります。つまり、一度「もう一度買ってみよう」と思った顧客は、その後も継続的に購入する可能性が高まるのです。
だからこそ、F2転換は「優良顧客への入り口」として、非常に重要なステップなのです。仮にF2転換率が10%から15%に上昇すれば、F3以降へ進む顧客の母数も増え、最終的にはLTVの底上げにつながります。
F2転換のために有効な初回フォロー施策の例
では、どうすればF2への転換を促せるのか?鍵となるのは「商品起点」ではなく「顧客起点」で考える施策です。例えば以下のような施策が挙げられます。
- 購入直後のサンキューメールや使用方法のフォロー
- 次回購入時に使えるクーポンの送付
- 購入内容に応じたレコメンド配信
- 商品満足度アンケートとインセンティブの組み合わせ
これらはすべて、顧客の体験価値を高め、ブランドに対するロイヤルティを育てる施策です。顧客とどのようなコミュニケーションをとるべきかお悩みの方は、以下の顧客コミュニケーション設計書をご活用ください。
\業種別 設計イメージ例付き/
F2転換の成功事例
F2転換率を改善するうえでは、単に施策を用意するだけでなく、「誰に」「いつ」「どんな内容で」届けるかといった体験設計の視点が欠かせません。
フュージョンではこれまで、多くの企業様とともにDM(ダイレクトメール)を活用したCRM施策を実行してきました。そのなかでも特に、F2転換率やアップセル率に大きな成果を生んだ2つの事例をご紹介します。
初回購入顧客へのパーソナライズDMでF2転換率が200%向上(株式会社ポーラ 事例)
本事例は、ECサイトで初回購入した顧客へのDM(ダイレクトメール)を見直し、F2転換率を200%向上させた改善施策の一例です。
当初の課題は、初回購入者数は多いものの、再購入(F2)への転換が伸び悩んでいたことでした。
リピート商材にも関わらず反応が鈍化していた背景には、「DM送付のタイミング」と「コミュニケーション内容」の最適化余地がありました。
【改善内容】
- 送付タイミングの最適化:従来は一律で購入から3ヶ月後にDMを送っていたが、商品がちょうど使い切られるタイミングに合わせて個別送付へと変更
- 封筒の工夫:上品で透明感のあるトレーシングペーパー素材を採用し、開封意欲を喚起
- DM内容の刷新:従来の販促感の強い訴求から、手紙風の語りかける構成へ。顧客に寄り添うトーンで設計
【得られた成果】
- F2転換率が200%アップ
- 商品に関する問い合わせ件数が増加
- DM内で紹介した関連商品の併売率も向上
- 圧着ハガキと比較して、保管されやすく、購入時期の分散にも効果
これらの結果から、「誰に・いつ・どんなDMを届けるか」という設計の重要性が明確に。F2転換率とLTVの両方に好影響を与える好事例となりました。
詳しくは、以下のページより事例をご覧ください。
タイミング・クリエイティブ改善がカギ!F2転換率の改善に成功!直感刺激DM(株式会社ポーラ)
定期DMの体験設計でロイヤルティとアップセルを実現(花王株式会社 事例)
本事例は、初回購入者の“心に残る体験”を演出することで、F2転換率とアップセル率の両方を改善したCRM施策です。
課題は、初回購入で終わってしまい、ブランドとの継続的な関係が築けないという点。
そこで、「感情的なつながり」を重視し、DMの体験設計を根本から見直しました。
【改善内容】
- DMとサンプル送付のタイミング変更:商品を使い始めるタイミングに合わせて、手紙とサンプルを別便で送付。「また届いた」というサプライズで印象を強化
- 上位商品のサンプルを同封:自然なアップセル導線を設計し、「次はこの商品を使ってみたい」と思わせる内容に
- 手紙の文面を季節ごとにパーソナライズ:形式的な表現ではなく、「自分のために書かれた」と感じられる内容で親近感と信頼感を醸成
【得られた成果】
- F2転換率が4.6%向上
- 同封した上位商品のアップセル率が改善
- SNSに顧客の喜びの投稿が寄せられるなど、ポジティブな反応が広がる
実際に、初回購入者がSNSにて喜びの声を投稿してくれることもありました。
本施策のポイントは、販促中心ではなく、初回購入後の体験価値を丁寧に設計したこと。顧客との長期的な関係性を築くために、感情に寄り添うアプローチが功を奏した好例です。
初回購入者との関係構築が鍵となるF2転換において、「どのタイミングで、何を届けるか」は、LTV最大化に直結する重要な視点です。
事例の詳細は、以下のページよりご覧ください。
フュージョン株式会社では、さまざまなクライアント企業へのF2転換・顧客ロイヤルティ向上向けDM企画・制作実績があります。ご興味のある方は、事例集をご覧ください。
F2施策の落とし穴と成功の分かれ道
F2転換率を高めるために、多くの企業がDMやメール配信などのCRM施策に取り組んでいます。
しかし現実には、「思ったよりF2が伸びない…」と感じている企業も少なくありません。
ここでは、F2施策でありがちな4つの失敗パターンと、それを乗り越えるための視点である「顧客起点」と「商品起点」のCRMのバランス運用について解説します。
F2転換でつまずきやすい4つの失敗パターン
以下は、F2転換率を下げてしまう代表的な要因です。無意識に当てはまっていないか、ぜひチェックしてみてください。
タイミングのズレ
商品がまだ残っているタイミングでDMを送っても、「まだ必要ない」と判断されやすく、反応は鈍くなります。
逆に使い切った後では、気持ちが冷めてしまい再購入のタイミングを逃してしまうケースも。
初回体験の印象が弱い
商品は届いたけれど、それで終わり。
「また買いたい」と感じられるような体験設計やフォローが不足していると、F2への動機づけが生まれません。
チャネルがバラバラで統一感がない
DM・アプリ・LINEなど、複数のチャネルでアプローチしていても、顧客の行動データが連携されていないと、一貫性のある体験提供が難しくなります。
CRMツールを導入しただけで止まっている
ツールはあくまで手段。導入して満足してしまい、配信ルールやPDCAの設計が整っていないと、顧客ごとに適した対応ができずに機会損失に。
成功のカギは「顧客起点×商品起点」のバランス運用
F2施策を成功させるには、顧客一人ひとりの行動や状態に寄り添う“顧客起点”のCRMを軸にしつつ、販売戦略に基づいた“商品起点”のアプローチを組み合わせることがポイントです。
以下に、それぞれの定義と施策例をご紹介します。
顧客起点のCRM施策(Customer-Centric CRM)
顧客のニーズ・行動・ライフステージに基づいて、一人ひとりに最適なタイミングと内容で価値提供を行うCRM施策です。
■例①:購買履歴に基づいたレコメンドメール
- 概要:購入履歴や閲覧データをもとに、顧客ごとに適した商品を提案
- 目的:LTVの最大化、リピート促進
- ポイント:「この商品を売りたい」ではなく「この人に合うものは何か?」から出発
■例②:離反兆候のある顧客へのステップフォロー
- 概要:最終購入から一定期間が経過した顧客に、限定オファーや再訪クーポンを配信
- 目的:休眠防止、エンゲージメント回復
- ポイント:売上よりも「つながりを取り戻すこと」がゴール
商品起点のCRM施策
特定の商品やキャンペーンを中心に、対象となる顧客へ一斉またはセグメント別にアプローチする施策です。
■例③:新商品の発売キャンペーンメール
- 概要:新商品を軸に、既存顧客や関連カテゴリの購入者にメール配信
- 目的:販売促進、新商品への関心喚起
- ポイント:「この商品を誰に売るか」が出発点
■例④:季節商材の販促DM
- 概要:季節イベント(母の日、年末年始など)にあわせて関連商品を訴求
- 目的:季節需要の刈り取り
- ポイント:販売戦略と時期を重ねて設計することが鍵
以上のように、「顧客起点での最適なタイミング×商品起点での強いメッセージ」の組み合わせによって、F2転換はより効果的に促進され、LTV向上にもつながります。
今すぐ実践できる!F2転換率を改善するアクションリスト
F2転換率の改善は、ツールの導入や大規模な施策だけでなく、「今ある顧客データ」や「日常の運用フロー」から見直すことでも着実に効果が期待できます。
ここでは、初回購入者を次回購入へ導くために、すぐに取り組めるF2改善アクションを4つの視点で整理しました。
顧客データの見直し
顧客データの見直し:使用状況・購買タイミング・チャネル別の反応など、初回購入者の行動を粒度高く把握
- 購買履歴やチャネルごとの反応データを深掘り
- 商品の使用サイクル、購買タイミング、開封率・クリック率などを確認
- F2に進んだ顧客と進まなかった顧客の違いを分析するのがポイント
初回購入者向けコミュニケーションフローの再設計
- 購入後30日以内の接点強化がカギ
- フォローメール(使用感ヒアリング、Q&Aなど)
- サンクスDM・クーポン配布
- 商品の使い方サポートや体験の後押し
- 「また買いたい」と思える体験導線を丁寧に設計
デジタルチャネルの連携強化
- メール・LINE・アプリ通知・リターゲティング広告など、複数チャネルを横断的に活用
- タイミング別シナリオを設計し、F2へのナビゲーションを複数設置
- 各チャネルで一貫したメッセージとトーンを保つのが重要
パーソナライズDM・同梱物の改善
- 手紙風のDMで“自分宛”の特別感を演出
- 商品の使い方ガイドや別商品のサンプル同梱で「次も使いたくなる」体験を提供
- パーソナライズ設計で、開封率・F2率を高める
F2施策の第一歩は、「初回購入者の気持ちを想像すること」です。
難しい仕組みよりも、今できる小さな改善の積み重ねが、F2転換率の底上げにつながります。
CRM施策の優先順位に迷っている方へ
F2転換率の向上は、CRM施策のなかでも即効性が高く、成果に直結しやすい重要指標です。
とはいえ、F2だけに注力して終わってしまうと、その先のF3・F4、そしてLTV最大化にはつながりません。
本当に成果を上げるCRMを構築するには、F2改善を起点に、全体の設計図を描くことがカギになります。そんな方のために、F2施策を含むCRM戦略全体を、4つのステップで整理できる無料資料をご用意しました。貴社の取り組みにご活用ください。
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