リピート率や継続率、どうやって伸ばしていますか?
拡張性やパーソナライズの柔軟さから、デジタルマーケティングは多くの企業で活用されています。新規獲得に強みがある一方で、「既存顧客のリピート促進」や「LTV最大化」など、関係性の深化を求められるフェーズでは、デジタル施策だけに限界を感じるマーケティング担当者も少なくありません。
そこで再注目されているのが、紙のダイレクトメール(以下、DM)です。
DMは開封率や記憶定着率の高さに加え、ブランドの“温度感”や世界観をリアルに伝えやすいという独自の強みがあります。特に、継続顧客に向けた「感情的な訴求」や「特別な体験」の設計において、デジタルとの相乗効果を発揮します。
本記事では、BtoC企業のマーケティング担当者の方に向けて、DMが既存顧客との関係構築において果たす役割と、デジタルマーケティング施策と組み合わせて成果を引き出すための企画・運用のポイントをご紹介します。あわせて、フュージョンが支援したDM事例についても解説します。
リピート率・継続率を上げるなら知っておきたい“DM×デジタル”の活用術
継続顧客の育成・維持において、DMは単体でも効果的なプロモーションメディアです。
しかし、デジタル施策と組み合わせることで、「記憶に残る体験価値(DM)」と「即時性・柔軟なデータ活用(デジタル)」が掛け合わさり、より深いエンゲージメントの構築が可能になります。
デジタル Web出稿、オウンドメディア、デジタルデバイス、ソーシャル等 |
アナログ(DM) 本テーマに即してDMを念頭に置きます |
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ターゲティング精度 | ・Web閲覧ログ等からの細やかなパーソナライゼーションが可能 | ・購買履歴・属性などからセグメンテーションが可能 |
口コミ拡張性 | ・ソーシャルによる爆発的な拡張性を有している | ・物理的に近い家族・友人に限定される ・量より質の高い口コミに期待がもてる |
スピード | ・基本的にスピードが速い ・タイミングコントロールがしやすい |
・制作~印刷~発送の時間が長くなりがち |
質感 | ・質感≒Webモニタ上の投影に限られる ・動画連携や制限の無いスペースは持ち味 |
・ 五感に訴えることができる ・立体的な仕組み化が可能 ・気持ちを伝えやすく、上質なコミュニケーションも可 |
保存性 | ・圧倒的な情報量に埋没しやすく、保存性も低い | ・特にDMにおいては、保存性は高い ・自分に必要なカテゴリであれば長い期間保有する |
費用対効果 | ・一人あたり実施コストは圧倒的に安い ・コスト効率のコントロールがしやすい ・効率重視のあまり思い切った施策につながらないことも |
・一人あたり実施コストはオンラインに比べ高い ・目的とLTV観点を踏まえたターゲティングが適えば、大きな費用対効果をみいだすことも可能 |
デジタル施策には、Web閲覧履歴などを活用した精緻なパーソナライズや、ソーシャルメディアによる爆発的な拡散力、さらに即時性とスピード感という強みがあります。
一方で、情報が画面越しに留まりやすく、保存性や印象の定着という面では弱さも見られます。ただし、コスト効率は非常に高く、短期的な接点づくりや広範なアプローチには最適です。
一方、DMは購買履歴や属性に基づいたターゲットセグメント配信が可能で、五感に訴える表現や立体的な仕掛けによって、より質の高い体験の提供が可能です。印刷・発送には時間がかかりますが、物理的な媒体ならではの保存性や信頼感によって、じっくり読まれる傾向があります。費用はデジタル施策と比較すると一見高めですが、LTV最大化を目指す中長期施策として、適切なターゲティングのもとに行えば高い費用対効果が期待できます。
つまり、目的や対象顧客に応じて、
- スピードと拡散力を活かすならデジタル
- 印象に残る顧客体験や信頼感の醸成を重視するならDM
といった形で役割分担しながら併用することが、最も効果的です。ここからは、具体的な企画・設計の方法を解説します。
DMの成果を左右する、顧客データ×ターゲティング戦略
DM施策の成果を最大化するには、まずCRMを中心とした顧客データの活用が欠かせません。購買履歴や行動履歴、興味・関心といった情報をもとに、細やかで実効性のあるセグメント設計を行うことで、反応率の高いアプローチが可能になります。
特に紙DMは、1通あたりのコストがかかるため、興味や購買意欲が高いと見込まれる顧客層を的確に絞り込むことが、費用対効果を高める鍵となります。
無駄打ちを避け、届ける相手に最適な内容を届ける。この設計段階こそが、DM施策成功の最初のステップです。
メッセージが刺さるのは“いつ・どう届けるか”で決まる!DM×デジタルの最適解
デジタル施策と紙DMを連携させることで、「情報量」と「印象」の両面からのアプローチが可能になります。
たとえば、リアルタイム性のあるデジタル施策でタイミングよく接点を持ちつつ、紙DMで手元に残る“感情に訴えるメッセージ”を届けることで、購入や継続利用を後押ししやすくなります。
よくある効果的な例としては、
- 初回購入者へのフォローDM
- キャンペーンのタイミングに合わせたマルチチャネル配信
といったタイミングを意識した施策です。
また、DMを送る時期やメッセージ内容を、メール・LINE・アプリ通知など他のチャネルと連動させることで、一貫性のあるブランド体験を提供でき、顧客との関係性の質をさらに高めることができます。
参考として、富士フィルムの協力により行われた実証実験では、ダイレクトメール(紙のDM)とメルマガを組み合わせた訴求と、メルマガ単体での訴求とで効果を比較しました。
結果として、DMを送付しているグループは、メルマガのみを送付したグループに比べて、「アクセス数」「注文数」「クーポン使用率」の全てで効果が高いことがわかりました。
出典:MarkeZine「紙メディアは意外にも若年層に有効 3つの実証実験で明らかになったDMの効果を発表」
特に、今回のケースではDMを先に送った方が効果が高いこともわかっており、単純に組み合わせるだけではなく、施策に合わせてどのように組み合わせるかも重要であることがわかります。今回の例では、DMで詳しい内容を訴求した後にメルマガを送付することで、メルマガがリマインダーの役割を果たしたとも推測できます。
このように、適切なタイミングでの接点創出を行えば、デジタル施策とDMを組み合わせた相乗効果を狙うことができます。
フュージョンでは、デジタル×アナログ(DM)を併用した定番シナリオをまとめた資料もご用意しています。顧客とのコミュニケーション設計のヒントにぜひお役立てください。
反応率・LTVを上げるために欠かせない、DMの検証と改善サイクル
DMは、一度送って終わりではなく、必ず効果測定と改善を繰り返すことが成功の鍵です。
DMは設計次第で「誰に送ったか」「どれくらい反応があったか」といった情報を把握することができ、あらかじめKPIを設定しておけば、PDCAを回しやすいチャネルです。
たとえば、「優良顧客の売上構成比を10%向上させたい」といった目標に対して、送付前後の売上やレスポンス率を比較・分析すれば、成功要因や改善点が明確になります。
また、A/Bテストを活用することで、訴求内容・送付タイミング・デザインの違いが成果に与える影響を検証することも可能です。
さらに、精度の高い検証を行うためには、テストグループを無作為に設定し、属性の偏り(セレクションバイアス)を避ける設計が必要です。
これにより、データに基づいた確かな意思決定が可能になります。
フュージョンでは、DMの効果検証の進め方と効果測定データの収集手法例についてまとめたお役立ち資料を公開しています。ぜひ、ご活用ください。
継続顧客向けDM支援の成功事例
継続的な関係構築を目指すDM施策では、単なる再購入の促進にとどまらず、ブランドへの信頼や愛着を高める仕掛けが求められます。ここでは、継続顧客向け施策としてフュージョンが支援し、実際に高い成果を挙げた事例を紹介します。
DMとWebサイトを組み合わせた施策でF2転換率を200%へ(株式会社ポーラ)
株式会社ポーラが取り組んだのは、初回購入者に対するF2転換を促す戦略的なDM施策です。従来は3ヶ月ごとに一律で発送していた圧着タイプのDMを見直し、データ分析に基づいて最適なタイミングで発送する方式へと変更しました。さらに、クリエイティブも刷新し、ブランド体験価値を高める施策へと進化させました。
目的と対象
株式会社ポーラが販売しているシワ改善薬用化粧品「リンクルショット」は、初回購入後、一定の期間を超えるとリピート購入に繋がらないことが課題でした。
本施策では、従来の圧着DMを見直すことでF2転換率を向上させるとともに、「リンクルショット」の正しい使い方の理解促進と、クロスセル率の改善も目標に掲げ実施しました。F2とは「2回目の購入」の意味であり、このステップを越えることで継続率やLTVに大きな影響を及ぼすとされています。
施策のポイント
以下のような改善を通じて、F2転換とクロスセルの両立を図りました。
送付タイミングの最適化
データに基づき、商品消費サイクルを考慮して発送タイミングを調整。顧客の再購入意欲が高まる時期に合わせてDMを届けました。
クリエイティブの刷新
封筒は透明感のあるトレーシングペーパーを使用し、ブランドと商品を直感的に訴求できるデザインに。肌の透明感を想起させる素材と、保存したくなる高級感が特徴です。また、このDMでは、リピート購入を訴求する「リンクルショット」とクロスセル訴求商品である「ホワイトショット」を並べて紹介するリーフレットを同封し、それぞれの使用方法を解説する動画のQRコードを記載しています。
アクションを促す設計
DMの開封率を高める工夫を施すとともに、保存性の高い形状にすることで購買行動を持続的に引き出せるよう設計しました。具体的には、同封したリーフレットに記載したQRコードからWebサイトにアクセスすると、使い方を紹介する動画だけではなく、長時間使用し続ける大切さ、日々のコツの紹介、研究員のコメントなどを記載し、内容を充実させました。これは、Web上の動画で、DMだけでは理解が難しい部分を補填することで、商品理解の深掘りやリピート購入への興味喚起を促進する狙いがありました。
施策の成果とDMの効果
本施策により、F2転換率は従来比で200%に向上。さらに、関連商品のクロスセル併売率も300%に達しました。DMの効果持続期間も延び、これまでの圧着ハガキでは反応が2〜3日で減少していたところ、本施策では約10日間にわたり波が持続しました。その後も緩やかな購買が継続し、DM自体の保管率の向上が効果に直結したと考えられます。
顧客データをDMのセグメンテーションに活かした事例
アシックスジャパンでは、これまで購入上位顧客にのみ簡易的なDMを送付していましたが、アシックスの会員システムである「OneASICS」の登録促進を目的に、会員未登録の店舗顧客へ向けたDM施策を実施しました。
施策のポイント
以下のようなセグメントや分析を通じて、顧客のクロスセル・アップセルを実現しました。
WEB行動のトラッキングで効果測定・行動分析
このDMのポイントは、パーソナライズした二次元コードからWEB行動をトラッキングし、効果測定と行動分析を実施した点です。
結果として、DMを受け取った既存のお客様の多くは、Web上でコンテンツを確認しつつも実際は店舗で購入されていることを可視化できました。
また、POSデータとWebサイトのアクセスデータなどを組み合わせて、データベース化したことで、セグメントの切り出しができるようにも工夫しました。これにより、DMを受け取った顧客が店舗・ECどちらで購入しても購買が追えるため、DMの効果測定の精度が高まりました。
パーソナライズしたクリエイティブ
クリエイティブでは、DMに記載したQRコードをパーソナライズしただけではなく、QRコードからECサイトにアクセスすると、ポップアップでオファーを表示し、効果促進を狙っています。
成果とDMの効果
本施策の効果として、新規会員の獲得数が目標に対して152%を達成し、売上は高単価商品でありながらも計画比1.5倍、ROIも前年比125%を達成しました。また、DMからECの会員登録ページへの誘導で、会員登録率を3.3%改善し、売上目標達成率126%を実現しました。
フュージョンでは業界・業種問わず、さまざまなBtoC企業のDM施策をご支援しています。詳しくは以下の記事でも紹介していますので、あわせてご一読ください。
CRM戦略としてのDM活用で、継続率と顧客ロイヤルティを高める
顧客一人ひとりの関心や行動に寄り添い、最適なタイミングで的確なメッセージを届けることは、リピート率やLTV(顧客生涯価値)の向上に直結します。
だからこそ、DM施策を単なる販促手段としてではなく、CRM戦略の一環として設計・運用する視点が欠かせません。
紙DMには、デジタルでは補いきれない以下のような強みがあります:
- 記憶に残りやすい情報の定着力
- 感情的なつながりを生むコミュニケーション力
- 開封される必然性がある物理メディアの力
これらの特性を活かしつつ、デジタル施策と組み合わせて一貫した顧客体験を提供することで、企業と顧客の関係性はより深く、より長く育まれていきます。
フュージョン株式会社では、CRM戦略の企画設計から、クリエイティブ制作、データ活用までを一貫してご支援しています。
継続率向上やLTV改善を目的としたDM施策の導入・見直しをご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。