マーケティングの現場では「いい商品なのに売上が思ったように伸びない」「プロモーションの反応率が伸びない」といった課題がよく聞かれます。
その原因のひとつとして、訴求メッセージやチャネル設計だけでなく、オファーの設計が十分に練られていないことがあります。
オファーとは、顧客に「行動を起こす理由」を与える要素です。この記事では、CRM領域のマーケティング支援を行っているフュージョン株式会社が考える、マーケティング施策におけるオファーの役割と設計の考え方をご紹介します。
【目次】 マーケティングにおけるオファーとは なぜオファーが必要なのか 代表的なオファーの種類 顧客理解から考えるオファー設計手順 顧客コミュニケーション設計にお悩みの方はお気軽にご相談ください |
マーケティングにおけるオファーとは
オファーとは、一般的に「提案」や「訴求」という意味を持つ言葉です。ただしマーケティングの文脈では、顧客に商品やサービスを購入する際の付加価値や特典を示すものとして用いられます。オファーは、顧客の購買意欲を刺激し、最終的な購入行動へと導く重要な要素です。
たとえば、
- 「送料無料」
- 「初回限定で特典付き」
- 「無料トライアル実施中」
といった訴求はすべてオファーの一種です。具体的で魅力的なオファーを明記することで、顧客の関心を引き付け、アクションを促す効果が期待できます。
重要なのは、「何を伝えるか」ではなく、「なぜ行動するのか」を設計する視点です。オファーは顧客の心理を理解し、ニーズや欲求に応える形で提供されるべきです。
適切なオファーを提示することで、マーケティング活動の成果を大きく向上させられるでしょう。
なぜオファーが必要なのか
顧客が購入に悩んでいる際に、魅力的な取引条件(オファー)を提示することは、マーケティング施策の効果を高める大きな要素のひとつです。特に、購入を迷っている顧客に対して、魅力的な取引条件や特典を提示することで、購入の決断を後押しする役割を果たします。
オファーは、顧客の意思決定における“最後の一押し”として機能します。効果的なオファーを設計するためには、単に商品の魅力や価格だけに焦点を当てるのではなく、顧客の関心やニーズに応じたオファーを提供することが重要です。顧客の心理や動機に合わせたオファーを考えることで、より高い反応率や購入率を実現することができるでしょう。
オファーが与える心情への影響
ここからはオファーが顧客の心情にどのように訴え左右させるのか、主な役割について紹介します。
満足度を高める
オファーは、満足度を高める役割を担っています。ただし満足度を高めるには、前提として商品のベネフィットを刺激することが大切です。
購入する商品にベネフィットを感じ「良い商品」と理解してもらわなければ、どのような魅力的なオファーが来ても購入に至らないためです。仮にオファーによって購入に至っても、継続率は上がらない可能性があります。
「顧客にとってその商品がどのように課題を解決してくれるのか、その商品やサービスから得られる効果」といったことが、商品を購入する際に分からなければなりません。
たとえば化粧品で「純粋レチノール配合のアイクリーム」などの商品の特徴(メリット)を説明することがあるとします。
上記のような特徴よりも「この商品を使うと目元のシワが目立たなくなり、年齢より若く見え、毎日良い気分で過ごせる」など、商品を使用すると得られるベネフィットが具体的にイメージできるほうが大切です。
ベネフィットに加え、インセンティブなどの付加価値をつけるのもおすすめです。インセンティブとは、購入へ導くための直接的な動機づけとなるオファーです。
インセンティブにはさまざまな種類があり、プレゼントの付与や、割引、クーポン券、懸賞への応募権利などがあります。別商品のトライアルキットや別商品を付与するなど、おまけをつけたり、次回使用できるクーポンをつけたりしてもよいでしょう。
このように商品を購入するベネフィットを具体的に提示しつつ、インセンティブを加えることで、より満足感を高めることができます。
安心感を与える
安心感を与える点も、オファーの役割です。
顧客は商品を「使いこなせるか」「合わなかったらどうしよう」といった不安要素が少なからずあります。そのため、不安を解消し安心感を与えることで、購入の後押しができるのです。
(よくある具体例)
- 返金/返品保証
- カスタマーサポート対応
- お試し無料サンプル
- 分割払い
返金・返品保証やお試し無料サンプルは、化粧品などに見られるオファーで「購入する商品が合わなかったらどうしよう」といった不安を解消できます。
カスタマーサポート対応は、取り扱いが難しい商品やサービス、電化製品などを購入する際によく見られるオファーです。購入したあとに「利用方法がわからなかったらどうしよう」といった不安を解消できるでしょう。
さらに、支払いを延期する方法を提供することも効果的なオファーです。
たとえば、分割払いは高額商品の購入で特に有効なオファーとなり、請求書支払いは購入時に支払い方法を選択したり、登録したりする手間による離脱防止に有効です。
そのほか「この価格だと買うか迷うな」といった顧客の迷いがあるのであれば、送料込みの総コストに対して、負担軽減することもオファーのひとつとなるでしょう。
希少性を強調する
希少性とは「今だけ」や「あなただけ」といった制限を設けることで、「今買ってしまおう」という心理を働かせるものです。具体例としては以下の通りです。
- 期間限定:今月末まで、◯時〜◯時だけのタイムセールなど
- 数量限定:先着◯名様、限定◯個、おひとり様1個だけなど
- 条件限定:女性のみ/男性のみ、会員限定、初回限定、◯円以上購入された方のみなど
希少性を強調することは、前述した満足度を高めたり、安心感を与えたりする役割と併用するようにしましょう。ベネフィットを具体的に提示したり返品保証などの安心感をもたせたりすることは、顧客が「今すぐに購入するべきか?」と悩んだ際の安心材料となり、アクションの後押しができるためです。
このように、オファーにより複数の心情への影響を与えることができますが、人それぞれの価値観で「響く」ポイントは異なります。そのため、それぞれのターゲットに応じた顧客コミュニケーションの一環として、適切なオファーの設計が必要です。顧客とのコミュニケーション設計については、以下の記事で解説しています。
代表的なオファーの種類
フュージョンが持つダイレクトマーケティングの知見に基づいて、現代のマーケティングで活用しやすい代表的なオファーを5種類に整理しました。
タイプ | 概要 | 活用例 |
①顧客の不安を解消するオファー | 不安やリスクを減らして 行動ハードルを下げる |
無料体験/返金保証/口コミ掲載 |
②お得感を与えるオファー | 顧客に“得した感覚”を与える | 初回限定特典/送料無料/ ポイント還元 |
③希少性で行動を促すオファー | 今しか手に入らない価値を提示 | 数量限定/期間限定キャンペーン |
④参加・体験を促すオファー | 体験や関与を促す | 無料セミナー/体験キット/ アンケート特典 |
⑤信頼を高めるオファー | 安心・信頼を醸成し、 行動を後押し |
導入事例共有/認定ロゴ掲載/ レビュー提示 |
オファーは、顧客コミュニケーション設計の中でも行動喚起の設計になります。オファーは施策を「伝える」だけで終わらせず、CRM施策の各チャネル(DM、メール、LPなど)に共通する顧客を次の行動に導くための設計要素です。
上記を含めたより詳しいオファーの種類や内容については、お役立ち資料でリスト化していますので、ご興味のある方は資料をご覧ください。
顧客理解から考えるオファー設計手順
オファーは、単に商品やサービスの魅力を伝えるだけではなく、顧客の心をつかむための重要な要素です。しかし、そのオファーが効果的であるためには、顧客のニーズや関心、動機を深く理解しなければなりません。ここからは、オファー設計の基本ステップをご紹介します。
① 顧客理解
まず、誰に対してどんな価値を提供するのかを明確にします。
顧客の課題・関心・購買ステージ・心理的ハードルを整理することが出発点です。
ペルソナ設定やカスタマージャーニー設計によって、顧客がどの段階で「迷い」「不安」「欲求」を感じるのかを可視化します。
自社でカスタマージャーニー設計を行う際に役立つテンプレートを公開しています。ぜひご活用ください。
② 心理トリガーの選定
顧客の行動を促す心理的要因を特定します。
前述したような「損失回避」「社会的証明」「限定性」「安心」「好意の返報」など、行動心理のどれを活用すべきかを明確にします。
たとえば新規顧客には「安心」や「お得」、既存顧客には「優遇」や「信頼」が響きそう、など、自社の顧客理解の結果に応じて選定しましょう。
③ 価値定義
「このオファーを受け取ると顧客にどんなメリットがあるのか?」を言語化します。
値引きではなく、顧客の目的達成や課題解決につながる価値としてオファーを再定義するのがポイントです。
例)「500円割引」ではなく「初回購入で効果を実感できるチャンス」として伝える。
④ 表現設計
心理と価値を、チャネルに合わせた表現で具体化します。
DMなら「開封した瞬間に伝わる一言」、メールなら「件名での訴求」、LPなら「ファーストビューでの特典提示」など、チャネル特性に応じた最適化が必要です。
⑤ 効果検証
反応率・CVR・LTVなどのKPIを設定し、A/Bテストを行って効果を検証します。
オファーは一度作って終わりではなく、「どんな訴求が響いたか」をデータで振り返ることで、再現性のある施策に育てていきます。
「値引=魅力的なオファー」とは限らない
オファーにはさまざまな役割があり、値引はその中のひとつの手段にすぎません。
「値引をすれば購入してくれるだろう」と短絡的に金額を下げるのではなく、どのようなオファーを提示すれば顧客により満足してもらえるかを考えることが大切です。
さらに、オファーはあくまでも購入の最後の後押しだということも忘れてはいけません。商品そのものに魅力を感じてもらうことを前提に、顧客コミュニケーションを考えることが大切です。オファーは、あくまでその一部であることを心に留めましょう。
フュージョンでは、顧客コミュニケーションを効果的に設計するためのお役立ち資料を公開しています。貴社の取り組みにご活用ください。
顧客コミュニケーション設計にお悩みの方はお気軽にご相談ください
オファー設計は、顧客理解 → 行動設計 → チャネル最適化を一気通貫で考える必要があります。
フュージョン株式会社では30年以上にわたり、CRM領域において、現状分析による現状把握から戦略策定、マーケティング施策の設計や運用まで、総合支援をしてきました。
顧客コミュニケーション設計はもちろん、CRM領域でのマーケティングでお悩みのある方は、お気軽にご相談ください。