マーケティングを行うときは、当然のことながら、自社の顧客を理解し、顧客のニーズに合わせた製品やサービスを提供することが大切です。特にCRM戦略の設計段階においては、顧客を優良顧客、既存顧客、新規顧客などといったように適切にセグメント化し、それぞれのセグメントの行動を分析することが不可欠です。ここで役立つのが、顧客分類(顧客セグメント)です。しかし、自社の顧客を理解しようとしても、さまざまな顧客が存在するので一括りにして理解することは難しいでしょう。
顧客分類は、顧客を特定の基準や特性に基づいてグループ化するプロセスです。これにより、マーケティングを行う前提として各顧客グループの特性を理解し、その特性に基づいてパーソナライズされたマーケティング戦略を策定することができます。
このコラムでは、顧客分類の重要性について解説し、RFM分析を使った顧客セグメント例をご紹介します。CRMに取り組む中で、自社の顧客に対する理解を深めたい方は、ぜひご参考にしてください。
なお、顧客分類を用いたCRM戦略設計の進め方については、下記の参考コラムで詳しく解説しています。
顧客分類(顧客セグメント)の重要性
顧客分類(顧客セグメント)はマーケティング戦略を策定する上で重要なステップで、自社の製品やサービスが顧客のニーズにどのように応えられるかを理解するための基盤とも言えます。顧客分類はCRMを効果的に行い、LTVを最大化するためにも必要です。
顧客セグメントを作成するための一般的な基準には、購買行動そのものはもちろん、ほかにも地理的な位置、人口統計学的な特性(年齢、性別、収入など)、心理学的な特性(ライフスタイル、価値観、好みなど)などもあります。
これらの基準を用いて顧客をセグメント化することで、各顧客グループの特性を理解し、それに基づいて最適なマーケティングを行うことができます。例えば、一定金額以上購入する顧客をセグメントしたうえで、特定の地域に住む顧客は特定の製品を好む傾向があるとわかった場合、その地域に対するマーケティング施策を追加で打つようなケースが考えられます。
顧客分類により、自社にとって大切な優良顧客が誰かを把握したり、しばらく休眠状態に陥っている顧客が誰かを特定したりすることが可能になるため、マーケティング戦略の見直しや、次の施策の検討が進めやすくなります。
ご参考までに、顧客分類がどうマーケティングに活かされているかについて、フュージョンでは、2023年7月にBtoC企業のマーケティング担当者を対象に実態調査を行いました。この調査結果によると、全体回答数のうち、売上が「前年よりも増収見込み」と回答した企業の8割以上が 顧客分類を実施していることがわかりました。
また、顧客分類を行なっている企業のうち、増収見込みの企業の6割以上が顧客分類ごとにコミュニケーションを変えています。自社にとっての顧客分類の最適化を行うことで、CRMの効果的な実施が可能と考えられます。
詳細な調査結果については、下記のダウンロード資料からご覧いただけますので、ぜひご活用ください。
【資料ダウンロード】BtoCマーケティング活動実態調査 詳細レポートはこちら
RFM分析を利用した顧客セグメントの例
それでは顧客分類はどのように行うのが良いのでしょうか。ここでは、複数の切り口から購買データを俯瞰的に見ることのできる「RFM分析」を用いた顧客セグメント例をご紹介します。
RFM分析は、以下の切り口のなかから2つの切り口を取り出し、顧客を評価・分析する手法です。
- R(Recency)= 最終購入日からの経過日数
- F(Frequency)= 購入頻度(回数)
- M(Monetary)= 累積購入金額
以下の図では「R」と「F」を用いて顧客を分類した例を示しています。
例えば、商品によって価格が大きく異なる、購入頻度がそれほど高くはない業態の場合にこのように「R」と「F」を切り口で顧客を分類することがあります。
この場合、最終購入日からの経過日数が小さく、購入頻度が高い(左上に位置する)顧客が企業にとって優良な顧客であるといえるでしょう。
一方で、商品の価格に大きな差がない、購入頻度が非常に高い業態の場合には「F」と「M」等、別の切り口を用いて顧客を分類するほうが適していると言えます。
また、切り口だけではなくRFMそれぞれについて「しきい値をどのように設定するか」も重要なポイントになってきます。例えば、「F」はFrequency=購入頻度(回数)を表しますが、「F1」セグメントとして購入回数1回の顧客を分類するのか、それとも7回以下の顧客を分類するのか、業態や取り扱っている商材によって適切な値は当然異なります。
顧客分類ごとにパーソナライズされたマーケティング施策事例
このように顧客を分類して顧客ステージを可視化することによって、マーケティング施策実施時の優先順位や、選ぶべきマーケティング手法を明確にすることができます。
たとえば、自社にとって最も重要な優良顧客に対しては、特に大切な顧客と認識していることを伝え、特別感のあるオファーで関係性をより強くすることが考えられます。
「ルタオ」のブランドで人気のスイーツを展開する株式会社ケイシイシイ様の事例では、通販の顧客に対し「顧客の購買行動や心理に添ったアプローチ」ができていないことを課題と捉えていました。そこで、課題解決のために顧客の購買パターンを分析し、顧客の購買行動に合わせたダイレクトメール施策を実行し、その結果として優良顧客の売上が増加しました。
顧客の購買行動に合わせたダイレクトメール施策で売上アップに貢献(株式会社ケイシイシイ様)
優良顧客の離反率は他の顧客に比べて低いのが一般的ですが、当然ゼロではなく、離反した場合の影響は他の顧客に比べて非常に大きくなります。
もちろん優良顧客へのアプローチだけではなく、新規顧客へは2回目の購入を促すためのアプローチを、リピート顧客へは固定顧客へ引き上げるためのアプローチをとり、次の優良顧客を育てていくことも非常に大切です。
また、顧客セグメント結果によっては、特定の製品やサービスに対する関心が高いことが明らかになるかもしれません。このような情報は、新製品の開発や既存製品の改善に役立つ貴重なフィードバックとなるでしょう。
顧客分類は、顧客の行動とニーズを理解し、それに基づいて最適なマーケティング施策を策定するために必要なプロセスです。それぞれの顧客セグメントがどのように行動するかを理解し、それに応じてマーケティング戦略を作成し、施策を行うことで、顧客のエンゲージメントを高め、最終的には売上を増加させることが可能になります。
顧客分類を行って、マーケティング施策に新たな視点をプラスしよう
本コラムでは、顧客分類とRFM分析の重要性とそのマーケティング戦略への応用方法について詳しく解説しました。顧客分類は、顧客を特定の基準や特性に基づいてグループ化するプロセスであり、マーケティング戦略を策定する上で重要なステップです。一方、RFM分析は、顧客の購買行動を複数の切り口から俯瞰的に見ることのできる手法で、かつExcelでも取り組みやすいため、自社の顧客の現状を把握する第一歩として活用することができます。
フュージョン株式会社では、30年以上にわたり、さまざまな業界や業種のマーケティングを伴走型で支援してきました。自社の顧客分類に疑問を感じている方、顧客定義・分類はあるがCRM施策との連携がうまくいっていないと感じている方、ターゲットに響かない施策を実施していると感じている方など、お悩みのあるご担当者の方は、お気軽にお問い合わせください。