顧客に継続的に商品やサービスを販売・利用してもらい、そこから売上を得ている企業にとって、新規顧客の獲得と既存顧客の離反防止は両輪で取り組む必要があります。その中でも、離反を防ぐためには、既存顧客のロイヤルカスタマー化が重要であるということは以前のコラムでも紹介させていただきました。
▼参考コラム「ロイヤルカスタマーが重視される3つの理由と維持の方法」
https://fusion-co-jp-6308931.hs-sites.com/column/2021/08/loyal-customer
このコラムの中で、ロイヤルカスタマーは「売上貢献が高いことに加えて、企業やブランドに信頼を寄せてくれている顧客」と定義していますが、「企業やブランドに信頼を寄せてくれている」と思われる顧客の信頼や愛着の度合いは、どのように可視化するのでしょうか。
本来、これらの項目を厳密に評価しスコア化するためには、NPS(Net Promoter Score)調査に代表される顧客ロイヤルティ調査を実施する必要がありますが、このような調査を全ての既存顧客に定期的に実施するのは現実的ではありません。
▼NPS調査については、下記のコラムをご参照ください。
「マーケティングリサーチの基本と活用事例」
https://fusion-co-jp-6308931.hs-sites.com/column/2021/10/marketingresearch-basics
そのため、多くの企業は他の指標を用いてロイヤルカスタマーの定義をしています。
ロイヤルカスタマーを定義するための指標は、主に3つに分類することができます。
1.購買金額・回数を指標にする
ロイヤルカスタマーの定義例:1年間で〇円以上/〇回以上の購入があるお客様
2.購買・利用期間を指標にする
ロイヤルカスタマーの定義例:これまでの購入年数が〇年以上のお客様
3.企業・ブランドとの接点を指標にする
ロイヤルカスタマーの定義例:これまでの購入・体験を含めた企業との接点が多いお客様
(※購入金額・回数・期間に加えて、イベント参加などの体験も数値化して加算)
今回のコラムでは、ロイヤルカスタマー向けのロイヤルティプログラムで3つの指標をどのように定義し利用するのかを、他社事例を通して解説していきたいと思います。
1. 購買金額・回数を指標にする
冒頭で、ロイヤルカスタマーは「売上貢献度が高いことに加えて、企業やブランドに信頼を寄せてくれている顧客」であり、「企業やブランドに対する信頼度というのは可視化が難しい」とお伝えしました。そのため、一定期間における購買行動である購入金額や購入回数を可視化した指標として用いて、購入金額が高く購入回数が多い顧客を自社にとってのロイヤルカスタマーと定義している企業が多いです。
指標の基本的な構造は、暦年における累計購入金額や累計購入回数を指標にし、階層に分けた各グループにそれぞれステータスをつけて特典を提供するというものです。なお、購入頻度が高く、ブランドスイッチが激しい一般消費財を扱う企業のロイヤルティプログラムでは、算出期間を暦年ではなく過去12か月間とし、毎月再計算しステータスを見直している企業もあります。どちらのケースであっても、一定期間における購買行動を指標として管理します。
また、派生事例として、購買行動を金額や回数以外をベースにしながら、別の可視化しやすい指標に置き換えてロイヤルカスタマーを定義している企業もあります。
航空業界の搭乗距離を指標にしているマイレージ(そもそも名称の由来が搭乗距離(マイル))が代表的な例です。
全日空のマイレージプログラムの場合、搭乗距離やそれ以外の提携サービスの利用金額でプレミアムポイントというポイントが付与され、年間累計ポイントが30,000、50,000、100,000プレミアムポイントで付与されるステータスが変わり、上位のステータスほど手厚い特典を提供しています。
例:ANAステータス別COMFORTサービス種類
2. 購買・利用期間を指標にする
既存顧客のロイヤルカスタマー化は、顧客の生涯価値、いわゆるLTV(Life Time Value)という長期的価値の観点からも重要です。
顧客が競合商品やサービスに離反せず、自社の商品やサービスを長く使い続けてくれているということは、すなわち顧客が企業やブランドに対し信頼し、愛着がある(=ロイヤルカスタマーである)と言えます。この考え方に基づいて、顧客が商品やサービスを購買・利用している期間をロイヤルカスタマーの指標として使用している企業もあります。
例えば、NTTドコモが提供しているdカードのdポイントクラブでは、年間の利用金額を指標としていますが、それと同列でNTTドコモの回線の継続利用期間を指標として使用しています。回線継続利用期間が4年未満、4年以上、8年以上、10年以上、15年以上の5段階にステータスが分かれています。例えば回線を15年以上利用している顧客には、利用金額にかかわらず常に最上位のステータスが付与され、特典が提供されています。
参考:dポイントクラブ会員ステージの決まり方
また、航空業界では暦年の搭乗距離だけではなく、初回搭乗から現在までの搭乗距離の累計を指標に取り入れている企業もあります。
例えばユナイテッド航空のミリオンマイラープログラムでは、生涯累計搭乗マイルが100万マイル以上の顧客をロイヤルカスタマーとし、ライフタイム・プレミア資格というステータスを付与し、その顧客には上位ステータスに付与される特典を生涯にわたって提供しています。
日本企業でも、無印良品や日本生命などが、この生涯累計を指標として取り入れています。
(参考)
無印良品「MUJIマイルサービス」
https://www.muji.com/jp/passport/mile/
日本生命「サンクスマイルメニュー」
https://www.nissay.co.jp/keiyaku/zuttomotto/thanks/
3. 企業・ブランドとの接点を指標にする
従来のオフラインでの顧客コミュニケーションに加え、近年ではマーケティングオートメーション(MA)やさまざまな計測ツールの導入で、デジタルスペース上の接触の計測が可能になり、顧客と企業・ブランドとのコミュニケーションを指標にすることが可能になりました。企業・ブランドとの接点、言い換えればコミュニケーション頻度を計測することで、複数の接点で多く・長くコミュニケーションをしている顧客は企業やブランドに好意を持っているという仮説を立てることができます。ただし、この指標に関しては、単独で指標とするということではなく、前述した2つの指標を補完する指標として使用されているケースが多いです。
例えば、スターバックスのロイヤルティプログラムである「スターバックス® リワード」は税込54円の購入で1つのスターが付与され、年間250個のスターを集めることによって翌年上位の会員ステータスが付与されます。250個のスターを集めるためには単純計算で13,500円分の購入が必要となります。
一方で、スターはスターバックスが開催する店頭イベントへの参加でも付与されます。顧客にはスターを付与することでイベント参加のモチベーションを与えているわけですが、本当の目的はイベント参加によってスターバックスでしか提供できない独自の体験を通じ、一層スターバックスを好きになってもらいたいということであり、ロイヤルカスタマーの育成にとって重要な機会と言えるでしょう。
スターバックスではスターを購入金額だけではなくブランドが好きかどうかを測る指標としても活用することで、ロイヤルカスタマーを可視化し育成しています。
参考「スターバックス® リワード」
https://www.starbucks.co.jp/rewards/
欧米の企業では、早くから付帯サービスや特別体験の利用を指標に取り入れることで、ロイヤルカスタマーの可視化と育成を行ってきました。
一方、日本においては、古くからトレーディングスタンプ(スタンプカード)を用いてプログラムを提供し、その延長線上において購買金額や回数をロイヤルカスタマーの指標にしている企業が多くなっています。従来は着目してこなかった他の指標を組み合わせたうえでロイヤルカスタマーを可視化することは、他社との差別化にもなり、かつ中長期的な顧客育成やLTVの最大化につながると考えられます。
4. ロイヤルカスタマーの育成ならフュージョンへ
顧客に商品やサービスを継続的に購入、利用してもらうためのロイヤルカスタマー育成戦略は企業の経営課題としても重要です。そして、ロイヤルカスタマー育成戦略そのものが、企業のビジネス戦略と合致していることが必要です。
フュージョン株式会社では、30年以上にわたりCRM支援サービスとしてロイヤルカスタマー育成のための現状把握から戦略策定、ロイヤルカスタマー育成のためのロイヤルティプログラムの開発・運用支援まで、多くのクライアントをご支援してきました。
ロイヤルカスタマーについてこのような課題をお持ちでしたら、まずはご相談ください。
・ロイヤルカスタマーが重要とわかっているが、何から手を付けていいかわからない
・自社のロイヤルカスタマーの定義を決めたい、あるいは見直したい
・ロイヤルカスタマーの定義はあるが、維持・育成の取り組みができていない
・実施中のプロモーション施策の精度を高めたい
「ロイヤルカスタマー支援サービス」資料ダウンロードはこちら
https://fusion-co-jp-6308931.hs-sites.com/library/royal_customer/
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