
BtoBマーケティングにおいても、顧客や見込み客への販促活動を行う上で、行動予測は欠かせません。
BtoCマーケティングの分野では、すでに様々な購買行動モデルが提唱されています。
最初に提唱された行動モデルは、セント・エルモ・ルイスが提唱した購買行動モデル「AIDA」(Attention(注意)、Interest(興味・関心)、Desire(欲求)、Action(行動)の頭文字)で、100年以上前から提唱されているものです。
その後、1920年代にサミュエル・ローランド・ホールによる広告宣伝の心理プロセスのモデルとして「AIDMA」(Attention(注意)、Interest(興味・関心)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(行動)の頭文字)が提唱されました。
今日においても、多様化する行動をカバーするために様々な行動モデルが生み出されています。
一方、BtoBマーケティングの分野において、行動モデルはあまり議論されてきませんでした。
というのも、BtoCと比べてBtoBには異なるビジネスの特徴があるからです。
| 【目次】 BtoBにおけるビジネスの特長 BtoB購買行動モデルの5ステップ BtoBビジネスにおいて重要な視点 BtoBビジネスでよくある失敗とその対策 BtoB購買行動モデルを踏まえた施策設計をしよう |
1. BtoBにおけるビジネスの特徴
購買行動モデルを考える上で大事なのは、BtoBにおけるビジネスの特徴を知ることです。
まずはBtoBビジネスの特徴を見てみましょう。

BtoBビジネスには、主に以下3つの特徴があります。
【BtoBビジネスの主な特徴】
- 購買の関与者が複数で多層である
- 購買決定までに時間がかかる
- 意思決定の心理は論理的で合理的である
それぞれについて以下解説します。
1.購買の関与者が複数で多層である
BtoB商材を購入する場合、その金額にかかわらず、購入担当者だけで決定することはあまりありません。多くの場合は、購入権限を持つ上長や購買担当部門がかかわります。加えて、購入金額が大きくなる場合は、社内の役員会に稟議を提出して承認を受けるという企業がまだまだ多いのではないでしょうか。
2.購買決定までに時間がかかる
購買に対する関与者が多いことは、購買の検討開始から実際の購買決定まで時間がかかってしまうことを意味します。
一方で、BtoCの場合は、大多数の商材において購買決定までそれほど時間をかけることはありません。コンビニエンスストアで飲料水を購入する時に何時間も費やす人はいないと思いますが、BtoBの場合、商材によっては事前調査や検討、関係者の説明や調整などで数か月、年単位の時間が費やされることもあります。
3.意思決定の心理は論理的で合理的である
BtoC商材の場合、消費者は「CMでよく見る」「タレントが使っていた」「色が好き」等の心情的、直感的な心理で購買を決定することが多いですが、BtoB商材の購買時には「納期が確実に守られる」「費用が予算内で収まる」「品質は求める以上のものがある」などの論理的で合理的な説明が求められ、それらを総合的に判断して決定されます。
つまり、BtoBの購買行動モデルでは、「多数かつ多層」の関係者間の「論理的で合理的」な意思決定プロセスにおいて、「決定までの長期間」にわたる最適な関係作りを念頭に置く必要があります。そのため、BtoBでのペルソナは、BtoCのように購入者についてのみ設定するのではなく、現場担当者のペルソナや購買の意思決定責任者のペルソナなど、複数設定する必要があります。
2. BtoB購買行動モデルの5ステップ
次に、BtoBビジネスにおける購買行動モデルは、下記5つのステップに分けることができます。
【BtoBでの購買行動モデルの5ステップ】
(1)取り組む課題の決定
(2)解決方法の発見
(3)検証
(4)同意
(5)購買
(1)取り組む課題の決定
プロセスのスタートは、多くの企業の場合「課題」からではないでしょうか?
「売上を上げたい」「コストを下げたい」等の漠然とした課題から、「納期を短縮したい」「製品の品質を向上させたい」等明確な課題まで企業が抱える課題は様々です。
このような課題において、多くのケースでは、自分よりも上位の役職者から指示を受け課題解決方法を見つけるための業務に取り掛かるのではないでしょうか。
(2)解決方法の発見
課題を渡された担当者は、解決方法を探すことになります。
インターネットが普及する前は、懇意にしているパートナー企業の営業担当者に相談して解決方法を探すことも多かったと思います。
一方、現代においては、まず担当者が自分自身でウェブ検索して解決方法を探すことが多くなっているのではないでしょうか。
この段階では、一つの課題に対して複数の解決方法を見つけることになるでしょう。
(3)検証
複数の解決方法の中から、自分自身の環境に照らし合わせて最良の解決方法を検討します。
課題に合わせて「一番早くできるのはどれか」「一番早く効果が出るのはどれか」「一番安くできるのはどれか」等、いろいろな角度から検討することになりますので、多くの情報が必要です。
そのため、解決方法をより詳細に調査・比較し、さらに実際にコンタクトを取り詳細を確認し、適切な解決方法を選ぶための検討を重ね、検討結果を関係者に提案することになります。
(4)同意
検討結果を実行に移すためには関係者の同意が必要になりますが、BtoBの場合は社内承認が同意に相当します。金額が低い場合は承認者が少なく、また事後承認のケースもあるでしょう。
しかしながら、金額が大きい場合は承認者が複数になる場合が多いです。そのため、上長や関係部門に稟議を回す、または役員会に稟議を図ることになります。
同意を得るためには、論理的で合理的な説明が求められることはいうまでもありません。
(5)購買
同意を得られたのちに、購買手続きに入ることになります。
BtoCでは購買行動は自分で行いますが、BtoBにおいては、担当者が自分自身で発注先に発注手続きをするケースよりも、購買部門や法務部門という関連部門に依頼して発注手続きや契約関連の手続きの業務を行うことが一般的ではないでしょうか。
BtoBにおいては、以上のようなプロセスで購買行動を行っていると考えられます。
なお、BtoBでもBtoCと同じように、カスタマージャーニーマップを作成することでより顧客の行動を理解することができます。BtoBでのカスタマージャーニーマップの特徴や作成のコツについては、別記事「BtoB商材向け|カスタマージャーニーマップの特徴と作成のコツ」で解説していますので、あわせてご一読ください。
3. BtoBビジネスにおいて重要な視点
BtoBビジネスでは、一般消費者向けとは異なる視点が必要です。商品を販売する対象が組織であるため、合理的な判断基準と長期的な関係構築が求められます。ここではBtoBビジネスの運営で重要視されるの4つのポイントを紹介します。
ターゲットの解像度を高める
BtoBの対象は組織です。しかし「企業」という漠然としたものではなく、意思決定プロセスに関与する複数の人物(決裁者、利用者、評価者など)の異なるニーズを特定することが重要です。ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)のように、特定の企業群に絞った戦略的なアプローチも有効な手法の一つです。
●LTVの最大化
BtoBは一度の取引で終わらず、継続的な関係性が基本となります。目先の販売成果だけでなく、長期的なメリットを提供し、LTVを最大化するビジネスモデルを目指すべきです。顧客のニーズの変化を捉え、アップセルやクロスセルを促進するシステム作りが鍵となります。
マーケティングと営業部門のシームレスな連携
Webサイトや展示会で獲得した見込み客(リード)を、営業部門がいかに効率よくフォローアップできるかが成果を左右します。部門間の情報共有を円滑にするMA(マーケティングオートメーション)やCRMといったツールの導入は、今や不可欠なアプローチと言えるでしょう。
「機能」ではなく「信頼」で差別化する
自社の商品やサービスが、競合と比較して機能面で圧倒的に優れているケースは稀です。BtoBの長期的な取引においては、機能差よりも「信頼できるパートナーかどうか」が重視されます。迅速なサポート体制や、顧客の課題に寄り添う姿勢が、他社との強力な差別化要因となります。
4. BtoBビジネスでよくある失敗とその対策
BtoBのビジネスモデルは、特有の失敗パターンが存在します。しかし、それらを事前に理解し対策を講じることで、成功の確率は大きく向上します。ここでは、よくある失敗例とその具体的な対策を解説します。
プロダクトアウトでのアプローチ
自社の商品やシステムの機能的な優位性ばかりをアピールしてしまうのは、典型的な失敗例です。BtoBの取引では、顧客は「機能」が欲しいのではなく、「課題の解決」を求めています。
対策として、顧客のニーズや課題を深く理解することから始めます。自社の商品が、顧客のどのような課題を解決し、どのようなメリットをもたらすのかを明確に伝える「ソリューション営業」の手法に切り替えることが重要です。
購買プロセスの複雑さの軽視
一般消費者向けの販売と違い、BtoBの導入決定には複数の部署や役職者が関与します。担当者のニーズは満たせても、決裁者や利用部門の理解を得られずに商談が停滞するケースです。
このような場合には、対象となる企業の意思決定プロセスを把握するよう努めます。決裁者、実務担当者、情報システム部門など、それぞれのニーズに合わせた情報提供やアプローチを準備し、組織全体の合意形成を推し進めることが重要になります。
マーケティングと営業の分断
マーケティング部門がWebサイトや展示会でリードを集めても、その情報が営業部門に適切に共有・活用されない失敗です。ツール上で情報が分断され、効果的なアプローチができず機会損失を招きます。
対策として、MAやCRMといったツールを導入し、リード情報を一元管理するシステムを構築します。リードの定義や評価基準を両部門ですり合わせ、継続的な情報共有と連携を強化することで、販売プロセスの効率化と成功率の向上を目指します。
短期的な成果の追求
BtoBは信頼関係の構築から取引開始までに時間がかかるビジネスモデルです。短期的なリード獲得数や販売件数だけを追い求めると、長期的な関係構築を前提とした本質的な継続施策がおろそかになりがちです。
したがって、リードの「数」だけでなく、「質」やその後の「LTV(顧客生涯価値)」を重視する指標を設定します。コンテンツマーケティングなど、顧客の課題解決に役立つ情報を中長期的に提供し続ける手法で、信頼関係を構築することが導入への近道となります。
5. BtoB購買行動モデルを踏まえた施策設計をしよう
今回は、BtoBにおける購買行動モデルは
(1)取り組む課題の決定(Problem)
(2)解決方法の発見(Solution)
(3)検証(Inspection)
(4)同意(Consent)
(5)購買(Buy)
の5ステップに分けられることについて、その内容も含めご説明しました。
特に、(2)解決方法の発見のステップにおける担当者の行動は、昔と比べて外から見えにくく、顕在化していないことが多いです。そのため、さまざまなアイデアと施策によって、いかに担当者の行動を顕在化させ、フォローアップするかが重要になります。
なお、BtoB購買行動モデルの各ステップに対するマーケティング施策は、マーケティングファネルを用いて分類することもできます。
マーケティングファネルを使ったBtoBマーケ施策の改善方法
BtoBマーケティングでのリード獲得とは?主な手法例や効果を出すために必要なアクション
BtoBマーケティングでのリードクオリフィケーションと具体的な方法
BtoBマーケティングの基本をやさしく解説|背景・特徴・取り組みのポイント
BtoBビジネスの特徴から表れる購買行動モデルのステップについて、ご理解頂けたでしょうか。少しでも日々のマーケティング活動の一助になれば幸いです。
フュージョン株式会社では、BtoBでの新規顧客開拓や、マーケティング戦略設計に関するご支援を行っています。BtoBマーケティングでお悩みのある方は、お気軽にお問い合わせください。













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