昨今のCX(顧客体験)の定着や、顧客データ統合の環境が整ったことにより、見込み客を含む顧客ひとりひとりのニーズや購買履歴に合わせたコミュニケーション(One to Oneマーケティング)の必要性が高まってきました。フュージョン株式会社はCRM領域を得意とするマーケティング会社ですが、当社でもコンサルティングを含めたCRM支援に関する多くのご相談をいただいています。
今回のコラムでは、そもそものCRMの定義やゴールと役割、マーケティングとの違いの有無を解説するとともに、CRM領域での課題解決の流れをご紹介します。
CRMとは?そのゴールと役割、マーケティングとの違い
CRMとは、Customer Relationship Management(カスタマー リレーションシップ マネジメント)の略で、顧客関係マネジメントのことを指しています。
そもそものCRMは、顧客との関係性の維持や顧客満足の向上によって売上の拡大や利益の向上を目指すための顧客志向の経営戦略であり、それに伴う手段や手法です。
マーケティングの最終的な目的は売上を上げることです。
CRMでは、売上の構成要素を「客数」と「客単価」に分解し、さらに「客単価」を「来店回数」×「1回当たり購入点数」×「1点当たり単価」へと分解します。そして、これらの要素のどこを上げるべきか、KPIをしっかり決めて取り組むことが大切です。
マーケティング活動の効率を評価するKPIの一例として、ROI(Return on Investment)があります。ROIは、事業への投資とその投資から得られる収益の収益率を測るもので、広く「費用対効果」として認知されています。
次に、CRMとマーケティングの違いですが、CRMはマーケティングの中でも特に顧客との関係性に着目した場合の経営戦略や手段・手法であり、マーケティング戦略を検討し施策を実行するための前提になるものです。「自社はどのような顧客と、どのような関係性を構築・維持していきたいのか?」をまず経営視点で明確にすることで、おのずと自社商品・サービスのマーケティング戦略も見えてきます。
そしてCRMツールは、そのために必要な顧客データを管理し、個々の顧客に応じた施策を行うために使う手段です。
CRMを自社でおこなう場合は、単にCRMツールを入れるだけでは足りず、最上位概念にあたる経営戦略や、そのあとに続くマーケティング戦略とセットで考える必要があります。CRMとマーケティングは違うものというわけではなく、顧客との関係性構築を軸に置いたときに、どのような構造になるかを理解することが重要です。
CRM戦略を進める前提となる考え方については、下記のコラムで解説しています。
売上を上げる6つの方法とマーケティング課題の設定・解決策検討プロセス
【簡易計算シート付】LTVとは?重視される背景やCRMとの関係、計算方法を解説
目標達成の道しるべ「KPI」を設定しよう
CRM領域でのマーケティング課題解決の流れ
それでは、CRM領域におけるマーケティング課題はどのような流れで解決していくと良いのでしょうか。
ここでは当社の支援実績を踏まえ、一般的なフローをご紹介します。
【STEP1】現状把握
まずは、CRM戦略の有無や、準ずる戦略・計画などがあるかどうか、ある場合はどのような内容になっているか、現状を細かく把握し整理します。フュージョンでご支援する場合は、当社独自のCRM診断フレームワークに基づいてCRM戦略の棚卸しを行いますが、整理するときの軸としては、主に3つ用意しています。
<CRM戦略棚卸しの軸>
- CRM戦略の有無や内容
- CRM実行計画内容や施策設計
- CRM実務レベルでの施策ひとつひとつの状況
自社でのCRM見直しを行おうとした場合でも、これらの軸に応じたドキュメントの有無や内容を確認するとともに、関係者へのヒアリングを通じて、現状のCRM戦略や実行計画、実施状況を可視化することが第一歩になります。
現状の可視化には、マーケティング業務設計がおすすめです。マーケティングにおける業務設計とは、マーケティング領域の業務の流れを可視化した上で、あるべき姿とのギャップを洗い出すことで本質的な課題を発見し、改善を図り業務全体を最適化するものです。詳しくは下記コラムをご覧ください。
【STEP2】戦略策定
CRM戦略を無事棚卸しできたあとは、改めてCRM戦略を策定しますが、最適な実行施策にまで落としていくために、マーケティング課題やToDoも把握し施策に盛り込む必要があります。
具体的には、顧客データを用いた基礎分析を行い、現状の顧客動向を可視化します。顧客属性、時間軸、場所、商品、受注チャネルなどのサービス軸を整理し、「変化」と「違い」を把握しましょう。
自社の顧客像を可視化できたら、カスタマージャーニーマップを作成し、顧客とサービス・商品との接点、およびそこでの体験・感情を時系列に並べ、それをもとにマーケティング施策計画とその効果を測定するKPIを設定します。マーケティング施策計画はスポットではなく年間で、長い時間軸を意識して設計しましょう。
【STEP3】具体的アクション
マーケティング施策計画ができたら、次は個別の施策を実行していきます。
施策を実行する際は、やりっぱなしにするのではなく、STEP2で設定したKPIに基づき効果検証→改善を繰り返しましょう。
1人のお客様が顧客が一生の間にもたらしてくれる価値を「顧客生涯価値(Life Time Value=LTV)」と言います。施策の効果は、施策単独での実施結果だけでなく、顧客のLTVを継続的に見ながら企業のCRM戦略全体の成果も常に意識して取り組む必要があります。
CRM戦略は定期的な棚卸しが必要
CRMは単なる顧客とのコミュニケーション手段ではありませんし、ツールを導入すれば良いというものでもありません。CRMとは、ブランドと顧客の関係維持や顧客満足の向上により、売上や利益の拡大を目的とする顧客志向の経営戦略です。そのため、外部環境や内部環境の変化に伴い、CRM戦略は定期的に棚卸をする必要があります。棚卸する際には、CRM設計の基本アプローチに沿って取り組むのが有効です。
CRMに対してのWhyの部分については、「なぜCRMを取り入れるのか?」を明確にし、ビジョンやミッションを定義することが大切です。「Why」の具体例は以下のようなものが挙げられます。
- 自社と顧客の関係をどうしていきたいのか?
- 将来、顧客にどのような変化を期待するのか?
- どのような顧客に会員になって欲しいのか?
それらは戦略としてドキュメント化され、組織内で共有化されている必要があります。
続いてHowの部分、どのような手段で実現するのかの部分を棚卸します。ここでは、Whyで決められたビジョンやミッションに対して手段が妥当なのか、妥当でないのか等で判断していきます。こちらもドキュメント化され組織内で共有されていることが重要です。
最後にWhat部分の棚卸しを行います。Howを実現するためにどのような手法を用いているのか、それは適切な使い方なのか、費用や結果はどうなのか等を整理しましょう。
CRMの重要性や戦略を見直す際に活用できる3つのヒントは下記の記事でご紹介しています。
マーケティングは人と人とのコミュニケーション
昨今のテクノロジーの進化の流れは凄まじく、多くの行動ログがデータ化されマーケティングに活用されていますが、データだけでロジックを組み立てても人の心は動かせません。人の心は最終的には人の心で動くものです。
わたしたちは「マーケティングに、体温を。」のマインドで、データにできない「想い」や「現場感」に寄り添い、クライアント企業のマーケティングパートナーとして伴走支援しています。
マーケティング課題が顕在化していなくても、「なんとなく課題感を感じている」「なにをしていいかわからない」「社内に相談する人がいない」といったところから、ぜひお気軽にお話を聞かせてください。